短編集(晩秋) 短篇集(晚秋)
X(twitter)上で参加させていただいたワンライへの投稿作品(2023年11月分)を主にまとめたものです。
这是在 X(Twitter)上参与的 One-Rai 投稿作品(2023 年 11 月)的主要汇总。
各話大体2000~3000文字程度。目次は1ページ目をご覧ください。
每话大约 2000 到 3000 字。目录请查看第 1 页。
素敵な表紙はこちらからお借りしました。 精美的封面是从这里借用的。
illust/97637194 插画/97637194
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勢い余る 得意忘形
とんだ放送事故になったな。 真是出了个大事故啊。
瞳孔をかっ開いた糸師凛に胸ぐらを掴まれながら、潔世一は一周回って冷えた頭でそう思った。
被瞪大眼睛的糸师凛抓住衣领,洁世一在转了一圈后冷静下来的头脑中如此想着。
このオフシーズン、潔は久々に帰ってきた日本でテレビ番組に出演することになった。そこまではいい。だが依頼内容はドッキリの仕掛け人役で、しかもターゲットはなんとあの凛である。マネジメント事務所がよくこの企画を通したものだと驚いた。
这个休赛期,洁久违地回到了日本,并受邀参加了一档电视节目。原本这没什么问题。但委托内容却是担任恶作剧的策划者,而且目标竟然是那个凛。洁不禁惊讶于经纪公司居然通过了这样的企划。
そして台本に目を通し、演技なんてやったことねーんだよなと少しばかり緊張しながら挑んだ結果が今の惨状である。
然后翻阅剧本,虽然从未演过戏,但还是略带紧张地尝试了,结果就是现在的惨状。
飲み会の場でカジュアルに切り出された嘘の引退報告に、凛はバチバチにキレた。周囲の客は一応サクラらしいが、店内の空気が冷え冷えである。
在酒会上,被随意提出的虚假退役报告激怒了凛,她大发雷霆。周围的客人虽说是樱花般的存在,但店内的气氛却冷冰冰的。
「テメェ、今何つった」 「你刚才说了什么?」
「えーと。俺引退しようと思って、」 「呃,我打算退役了,」
「あ?」 「啊?」
「るって言いました…」 「我说了……」
聞いてきた癖に最後まで言わせる気がまるでない。あまりの剣幕に視線だけで殺されそうだ。
明明是来听的,却一点也没有让人说完的意思。那气势简直要用眼神杀人。
背後に控えている仕込みのスタッフに助けを求めてこっそり視線を送るが、掲げられたカンペには「続行でお願いします!」と書かれている。勘弁してほしい。
偷偷向身后待命的工作人员求助,但举起的提示板上写着「请继续进行!」。真是的,饶了我吧。
「理由を言え。試合見りゃわかる、昨シーズンのお前の動きは過去一キレてた。んな状態で引退だと? ふざけてんのかクソが」
「说出理由来。看了比赛就知道,你上赛季的表现是史上最犀利的。那种状态下说要退役?你他妈是在开玩笑吧」
「最優秀選手賞獲ったらなんか、燃え尽き症候群っつーか? もうここまでかなみたいな気持ちにですね」
「要是拿了最佳选手奖,会不会有种燃尽综合症的感觉?就像已经到此为止了的那种心情。」
「掛かってこいとか抜かした癖にかよ?」 「明明叫嚣着来挑战,结果就这?」
「……お前アレ見てたの」 「……你看了那个啊。」
思わず舌を巻く。 不禁咋舌。
受賞後のインタビューで潔はそう確かに言ったし、その後蜂楽や馬狼からは反応もあった。しかしピッチの上とはまるで無関係の場である。凛という人間がまさかそんなところまでチェックしているとは思わなかった。
获奖后的采访中洁确实这么说过,之后蜂乐和马狼也有所反应。但这与球场上的情况完全无关。没想到凛这个人竟然会关注到这种地步。
困って再びカンペを見ると「プランBで」とある。 困惑地再次看向提示卡,上面写着「执行 B 计划」。
一度瞼を閉じ、息を吐いて腹を括る。 闭上眼,吐出一口气,收紧腹部。
「あー。実は、付き合ってる人がいて」 「啊——。其实,我有交往的人」
「…」
「ちょっと事情があって、その人と結婚しようってなったら俺が選手を辞めざるを得ないんだよ」
「有点情况,如果和那个人结婚的话,我就不得不退役了」
「……」
「まあ、最初に言ったのもまるきり嘘ってワケじゃない。区切りとしてはいいとこだろって気持ちもあって…」
「嘛,一开始说的也不完全是谎话。作为分界点感觉还不错…」
「………」
「ゴメン、なんか言ってくんね…?」 「抱歉,你不会说些什么吗…?」
凛からの圧力は増す一方である。 凛的压力不断增加。
恐る恐る言うと、凛は阿修羅の形相のままぽつりとつぶやいた。
战战兢兢地说道,凛保持着阿修罗的表情,喃喃自语。
「…死ね。クソが。許さねぇ。勝ち逃げだと? んな真似、お前だけは、」
「…去死吧。混蛋。我不会原谅的。想赢了就跑?那种事,只有你,」
「悪いとは思ってる。けど、その人の事情的にどうしようもなくて」
「我知道不好。但是,那个人情况特殊,实在没办法」
眉を下げながら言う。 低垂着眉说道。
依然胸倉は掴まれたままだ。お気に入りのシャツの襟元がどんどん伸びていく。クリーニングで直るだろうか。
依然被揪着衣领。心爱的衬衫领口越拉越长。送去干洗能恢复原状吗。
嘘を吐いている負い目から、潔の口振りは今ひとつ歯切れが悪い。しかしそれが返って話の内容に信憑性を与えていた。
或许是因说谎而心虚,洁的语气显得有些含糊。但这也反而增加了话语的可信度。
凛はきつく唇を噛み、黙り込む。そしてとてもゆっくりと瞬きを一つした。現れた双眸はいっそう激しい炎に揺らめいていて、潔は思わずたじろぎそうになる。ピッチの上であれば大いに受けて立つところだが、生憎とここは居酒屋だ。
凛紧咬着嘴唇,沉默不语。然后非常缓慢地眨了一下眼。那双眸中燃烧的火焰更加炽烈,洁几乎要被震慑住。若是在球场上,他定会毫不犹豫地迎战,只可惜这里是一家居酒屋。
「他人から言われてハイ辞めます、ってのか? 反吐が出る。所詮お前にとっちゃサッカーなんてそんなもんか」
「别人一说就乖乖辞职?真是令人作呕。说到底,对你来说足球也就不过如此吧。」
「んなわけ! …ッ」 「怎么可能!……」
煽られてつい声を荒げる。 被煽动得忍不住提高了声音。
いくらドッキリのためといえど、流石に言われっぱなしでいられる限度を超えている。悔しさに歯噛みしつつ、それでもどうにか飲み込んだ。
尽管是为了恶作剧,但一直被这样说,实在是超出了忍耐的极限。懊悔得咬牙切齿,但最终还是勉强咽下了这口气。
そんな潔の様子を見て、凛は据わった声で言う。 看到洁这样的样子,凛用沉稳的声音说道。
「なら」 「那么」
「なんだよ」 「什么啊」
「俺にしろ」 「对我来说」
「…は?」 「…啥?」
言葉の意図を掴めず困惑する。 无法理解话语的意图,感到困惑。
その瞬間、もとより間近にあった凛の顔が更に近づいて、鼻筋と睫毛が触れ合うくらいの場所にやってくる。意表を突かれて固まっている隙に、唇が触れる。舌が絡む。微かに血の味がする。
就在那一瞬间,原本就近在咫尺的凛的脸庞更加靠近,鼻梁与睫毛几乎相触。在措手不及、僵住的那一刻,唇瓣相触,舌尖交缠,隐约尝到了血的味道。
しかしその感触よりも、情念に燃える眼差しこそが潔の意識を捕らえて離さない。
然而,比起那触感,燃烧着情欲的目光更让洁无法移开意识。
ひゅう、と客の一人が口笛を吹いた。 呼,一位客人吹起了口哨。
唇だけ離して、そのままの距離で凛が言う。 凛微微离开唇瓣,保持同样的距离说道。
「俺にして、そのクソッタレと縁を切りやがれ。クソ潔」
「让我来,和那个混蛋断绝关系。真他妈爽快」
「………な、え、」 「………什、么、」
スタッフはガッツポーズを決め、「ドッキリ大成功!」の看板を手に傾れ込む。しかし残念ながら凛で占拠された潔の視界には映りようもなかった。
工作人员摆出胜利手势,手持「恶作剧大成功!」的牌子倾身而入。但遗憾的是,这并未映入被凛占据的洁的视线。
それは勿論凛の側も同じだったので、結果としてこのカオス極まる状況は潔が我に返るまで継続された。
当然凛那边也是一样的,结果这种混乱至极的状况一直持续到洁恢复理智为止。
その光景をもう一度見ようという勇気はなかったため、実際の放送がどうなったのか、潔はついぞ知らない。
没有勇气再看一次那光景,所以实际的广播变成了什么样,洁始终不得而知。