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エモーショナルに甘すぎる/横川的小说

エモーショナルに甘すぎる 情感上过于甜腻

10,076字20分钟

監獄時代から肉体関係だけあったふたりが、腹を括る話
从监狱时代起就只有肉体关系的两人,决心面对的故事


同棲ラブラブ未来軸rnisが見たい!恋愛関係でビビりながらもスパッと動くのはisgだったらいいな!rnは振り回されて苛立ちながらも、本当は満更でもなく無意識的に甘やかされて欲しい!などの全ての気持ちを詰め込みました。
想看同居甜蜜未来线的 rnis!恋爱关系中虽然胆怯但果断行动的如果是 isg 就好了!rn 虽然被折腾得烦躁,但其实内心并不反感,甚至无意识地渴望被宠溺!将所有这些心情都融入其中。


以下ご注意ください 请注意以下事项
5年後の未来軸/海外プロ設定/諸々の知識が適当なので、細かいことは気にならない人向け/飲酒描写あり
五年后的未来轴/海外职业设定/各种知识随意,细节不必在意者适用/含饮酒描写


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 ——

それは、糸師凛が21歳になる年のオフシーズンの事だった。
那是糸师凛 21 岁那年的休赛期。

「俺たち、付き合わない?」 「我们,交往吧?」

潔は、パリパリとした無機質な白いシーツの上で、事後にしては随分歯切れよくその言葉を口にした。
洁在干爽无机质白色床单上,以事后而言颇为干脆地吐出了那句话。

凛によってつけられた、キスマークというには痛々しい噛み跡をまばらにつけた身体が半分だけ掛け布団から出ている。
凛留下的,说是吻痕却显得凄惨的咬痕稀疏地遍布身体,半边身子露在被子外面。

予想だにしなかった言葉に凛が固まっていると、うつ伏せのまま、少しだけ心配そうに自分の下にあった枕を握りしめる潔の姿が視界に入る。
凛因意料之外的话语而僵住,趴着的洁,略带担忧地握紧了身下的枕头,这一幕映入眼帘。

ーー付き合う?こいつと、俺が? ——交往?和这家伙,和我?
5年前からずっと、潔のことが嫌いだった。必ずピッチの上で殺してやると決めてから、そしてお互いヨーロッパリーグへ所属してから、殺し合いという言葉がぴったりのプレーを続けてきた。その潔と、自分が。
从 5 年前开始,就一直讨厌洁。自从决定一定要在球场上杀了他,然后彼此都加入了欧洲联赛,就一直进行着恰如其分的厮杀。与那个洁,还有自己。

元々起きている時間のほとんどシワが寄っているせいで、凛のぎゅっと固まったような眉間がさらに深くシワを作る。
原本就因为醒着的时间大部分都皱着眉头,凛紧绷的眉间更加深了皱纹。

意図が分からない。 意图不明。
そんな疑問をぶつけるべく、口を開いたはずだった。 本该开口质问那疑惑。

「……勝手にしろ」 「……随你便」

事後で疲労した、脳のバグとしか思えなかった。 事后疲惫不堪,只觉得是大脑的故障。
ぽろっとこぼれ落ちた言葉を拾い上げた潔の顔は、あっという間にほわほわと綻んで、自分で言ったくせに、驚きで丸くなっていた大きな瞳はやわらかく弧を描いた。
洁捡起那不经意间滑落的词语,脸上瞬间绽放出柔和的光彩,尽管是自己说出口的,那双因惊讶而圆睁的大眼睛却温柔地弯成了弧形。

「じゃあ、よろしくな。凛」 「那么,请多关照了。凛」

おやすみ、と小さな声が落ちて、元々限界だったのか睡魔に吸い込まれていく。
晚安,微弱的声音落下,或许是早已到达极限,被睡意渐渐吞噬。

どうして、目の前の男の突拍子もない提案を受け入れてしまったのか。己のことが信じられなかった。
为什么,我会接受眼前这个男人突如其来的提议。连自己都无法相信。

恐ろしいほど穏やかに眠り始めた潔を直視できず、ベッド下に視線を送れば、先をぎゅっと結ばれた避妊具が2つ落ちていた。目の前に摘み上げて中の濁った液体を睨みつける。
无法直视开始平静入睡的洁,视线转向床下,发现两个紧紧系好的避孕套掉了下来。捡起眼前的东西,瞪着里面的浑浊液体。

そもそも、これがおかしいのだ。青い監獄で出会ってから数年、ずっと続く肉体関係。性別云々の話を抜きにしたって、誰がどう見てもおかしい。一般的に言えば、恐らく順序が違う。いや、自分たちに一般論なんて当てはめても仕方ないのかもしれないが。
说到底,这本身就是不对劲的。从在蓝色监狱相遇后的几年里,一直持续的肉体关系。撇开性别不谈,怎么看都是不正常的。一般来说,顺序可能不对。不,或许对我们来说,一般论根本不适用。

とぷんとゆるく揺れるそれは無機質で、もやもやとした思考をさらに邪魔するように聞こえ始めた寝息に無性に腹が立って、凛は拾い上げたそれらをゴミ箱に乱暴に投げ入れた。
那轻轻摇曳的无机质感,开始像是在干扰她那朦胧的思绪,让她对那渐渐响起的鼾声莫名地感到恼火,凛便将拾起的那些东西粗暴地扔进了垃圾桶。

 ——
「今日21時ぐらいに帰るけど、なんか買ってくるものあるっけ?」
「今天大概 21 点左右回来,有什么要我带的东西吗?」

朝の日課のストレッチを終えてリビングルームに行けば、私服姿の潔がトーストを齧りながらスマートフォンを弄っていた。
晨间拉伸结束后走向客厅,便看到穿着便服的洁一边啃着吐司一边摆弄着智能手机。

ヨーロッパリーグで活動する潔と凛は、現在年に一度のオフシーズンの真っ只中だ。
活跃于欧洲联赛的洁和凛,目前正处于一年一度的休赛期。

毎年オフシーズンが来るとお互いの家に何日か滞在するというのが恒例になっているが、今年はお互い帰国する用事があり、ウィークリーマンションを借りた。
每年休赛期到来时,他们都会互相在对方家停留几天,这已成为惯例。但今年两人都有回国的事务,于是租了一间周租公寓。

それもまた意味が分からない話だが、潔が「テレビの仕事が立て込んでるから、この期間は都内のウィークリーマンション借りようと思うんだけど、一緒に使う?」と当たり前のようにメッセージを寄越したので、凛も「セキュリティがちゃんとした所にしろ」とつい返事をしてしまった。
"这听起来也颇为莫名其妙,但洁理所当然地发来消息说:“电视工作排得很满,所以我想在这段时间租个市内的周租公寓,你要一起用吗?”于是凛也不由自主地回复道:“要选个安保措施好的地方。”

潔はすぐに中心地にアクセス抜群で、セキュリティのしっかりしただだっ広いマンションの情報を送ってきて、バタバタと2人で到着して今日で3日目となる。
洁很快找到了市中心交通便利、安保严密、宽敞舒适的公寓信息,两人匆匆赶到,今天已是第三天。

「ウエットティッシュと牛乳」 「湿巾和牛奶」
「そうだそうだ。オッケー」 「对对,没问题」

最後の一欠片となったパンを口に放り込んだ潔は、スマホのリマインドアプリに2つの言葉を打ち込んでいる。昨日告白をしてきた人間だと思えないくらい普段通りのその様子に、凛としては若干訝しげな気持ちになった。
洁将最后一片面包塞进嘴里,在手机提醒应用中输入了两个词。他那副样子,简直让人无法相信他昨天才告白过,一如既往的平常模样,让凛不由得感到一丝诧异。

「じゃ、また夜な」 「那么,晚上见」

忙しなく朝食の片付けをした潔が、キャップを深めに被ってドタバタとマンションを後にした。今日もテレビの収録だと言っていた気がする、と浅い記憶を掘り起こす。
匆匆忙忙收拾完早餐的洁,深戴帽子,慌慌张张地离开了公寓。隐约记得他说过今天也要去电视台录节目,努力挖掘着浅薄的记忆。

潔世一の知名度は数年前から高いが、20歳を超えてからその人気はうなぎ登りで、オフシーズンとなればテレビでその姿を目にすることも増えた。
洁世一的知名度从几年前开始就很高,过了 20 岁后人气更是直线上升,到了休赛期,在电视上看到他的身影也增多了。

一切メディアの仕事は引き受けない凛は、そういった仕事をポンポン引き受ける潔の気が知れなかったが、本人はビジネスも大切だからな、と当たり前のように言っていて、調子に乗っているようでムカついたというのが全ての感想だった。
凛从不接受任何媒体工作,对于洁毫不犹豫地接下这些工作感到不解,但洁本人却理所当然地说,这也是生意的一部分,让人感觉他得意忘形,令人恼火,这就是全部的感想。


『今日はバスタードミュンヘンにて活躍中の、潔世一選手の素顔を暴きたいと思います!』
『今天我们要揭露在巴斯塔德慕尼黑大放异彩的洁世一选手的真实面貌!』

噂をすればだ。 说曹操,曹操到。
気分転換にホラー映画でも見ようかと備え付けのテレビをつければ、画面に映ったのは先程までそこで子供のようにトーストを詰め込んでいた男だった。
正想着转换心情看看恐怖电影,打开配备的电视,屏幕上出现的却是刚才还在那里像孩子一样狼吞虎咽吐司的男人。

右上に再放送と出ているその番組は、普段はゴールデンに近い時間帯で放送されているようだ。取材はわざわざドイツで行われたらしい。日本でも知名度の高い女性タレント2人が、食事をしながら潔にインタビューをしている。
右上显示着‘重播’的节目,似乎平时是在接近黄金时段播出的。采访似乎特意在德国进行的。两位在日本也颇具知名度的女性艺人,一边用餐一边对洁进行采访。

『潔選手、今めちゃくちゃ女性人気も高いじゃないですか。好みのタイプってどういう人なんですか?』
『洁选手,现在人气爆棚啊。你喜欢什么样的类型呢?』

うんざりした気持ちのまま流し見していると、凛にとってはこの上なくくだらなく、興味のない質問が飛び出す。
带着厌烦的心情随意看着,凛觉得这个问题无比无聊,毫无兴趣。

緊張しているのか、ビールがなみなみ注がれた大きなジョッキをしきりにあおっていた潔が困ったように口を開く。
洁似乎很紧张,不停地喝着满满一大杯啤酒,我无奈地开口。

『青い監獄時代と変わってないけど、いいですか?』 『虽然和蓝色监狱时代没什么变化,这样可以吗?』
『笑顔が素敵な人?それネットでよく見ますけど、一切変わってないんですか?』
『笑容很美的人?这在网络上经常看到,一点都没变吗?』

『すごい知ってるじゃないですか!本当に変わってないですよ』
『你知道得真多啊!一点都没变呢』

リサーチされてる、と照れたように笑いながら話す潔に対して、女性タレントが嬉しそうに食らいつく。
面对洁有些害羞地笑着说被调查了,女性艺人开心地追问。

今すぐこの茶番のようなやり取りを消してやろうと、改めてリモコンを手に取ると、どうでもいいはずなのに、状況的に無視ができないタイムリーすぎる質問が投下された。
正想立刻结束这出闹剧般的对话,再次拿起遥控器时,本该无关紧要的,却因时机过于巧合而无法忽视的问题被抛了出来。

『ぶっちゃけ、今恋人います?』 『说实话,现在有恋人吗?』

取材が行われたのはどれくらい前なのか分からないが、取り敢えず昨晩よりずっと前であることは確かだ。そして凛と潔が初めて身体を重ねたのは5年前。今すぐ消したいのに凛の指はどうにも動かず、理不尽な力を込められたリモコンが軋む。
虽然不清楚采访是多久之前进行的,但可以肯定的是,那比昨晚要早得多。而凛和洁第一次身体交叠是在五年前。尽管现在想立刻删除,但凛的手指却怎么也动不了,被施加了不合理力量的遥控器发出嘎吱声。

『え!?攻めますね!うーん……』 『诶!?要进攻了啊!嗯……』

潔は困ったように人の良さそうな目尻を下げて、カメラの向こうを見るように遠くに視線を送った。突然青い視線が画面の向こうから降ってきたようだった。
洁困扰地垂下眼角,仿佛心地善良的人会有的表情,将视线投向远方,仿佛在看摄像机的另一端。突然间,仿佛有一道青色的视线从画面外投射而来。

『マネージャーNG出ました。残念』 『经理 NG 出现了。可惜』

潔が指差す先にタレントの2人も視線を送った。どうやらクラブチームのマネジメントスタッフがそこにいるらしい。右下にマネージャーNG、とポップな字体で表示された。
洁所指的方向,两位艺人也将视线投去。似乎那里有俱乐部团队的管理人员。右下角以活泼的字体显示着“经理 NG”。

『えー!気になる!今どれだけの女性が潔選手狙ってると思ってるんですか!?』
『诶——!好在意!你觉得现在有多少女生在瞄准洁选手啊!?』

『ええ!俺、青い監獄に来るまでバレンタインのチョコ0個だったのに、成長しましたね』
『是啊!我来到蓝色监狱之前,情人节巧克力可是 0 个,真是成长了呢』

潔はタレントの本気で悔しそうな感想もするりと交わして、最後まで好印象のスポーツ選手のままでトークコーナーは幕を閉じた。
洁与艺人真心感到不甘的感想巧妙地交锋,最终以给人留下好印象的运动员形象结束了谈话环节。

元々フィールドの外では争いを好まず人当たりのいい潔は、監獄を出てプロになってからますます世渡りが丁寧な人間になった。誰にでも平等に向けられるへらへらとした笑顔にはどんどん拍車がかかり、見かける度に癪に触る。
原本在赛场外就不喜争斗、待人友善的洁,自从出狱成为职业选手后,变得更加圆滑世故。他那对谁都一视同仁的假笑越来越让人看不顺眼,每次见到都令人恼火。

それでも、オフの度に顔を合わせて嫌いな笑顔を目の前に食事をし、ベッドの上で余裕のない顔でこちらを見る潔を組み敷いてしまう自分がいる。それは逃れようのない事実だ。
尽管如此,每次休假见面时,我都会与他共进晚餐,忍受他那令人厌恶的笑容,在床上看到他那副毫无余裕的表情盯着我,我竟然还能忍受这一切。这是无法逃避的事实。

付き合おうとは、一体何なんだ。そう提言してくるということは、少なくとも恋人が居ないのだろう。
交往?到底是什么意思。既然提出这样的建议,至少说明他目前没有恋人吧。

そのこと自体に興味は無いが、潔の意図は知る必要があると思った。リモコンをテーブルに置き、スマホを手に取る。
对那件事本身并无兴趣,但我觉得有必要了解洁的意图。将遥控器放在桌上,拿起手机。

【付き合う 何する】 【交往 做什么】
凛も潔もデジタルネイティブ世代だ。分からないことはインターネットに聞くことが見事に習慣化されている。よって、人生で叩くことになるとは思わなかった検索ワードが、強めのタップで検索窓に叩き込まれた。
凛和洁都是数字原住民一代。不懂的事情向互联网请教已经成了习惯。因此,从未想过会在人生中敲下的搜索词,被用力地敲进了搜索框。

ずらずらと並ぶ検索結果に比例して、凛の眉間は深く深く刻まれていく。
搜索结果一列列地排列着,凛的眉间也随之越来越深地刻上了痕迹。

①会う回数や連絡頻度を決める。 ①决定见面的次数和联系的频率。
②お互いについて理解を深める。 ②加深对彼此的理解。
③キスをしたり、身体の関係をもつ。 ③接吻,或发生肉体关系。
④季節のイベントを楽しむ。 ④享受季节性活动。
⑤周りに公言する。 ⑤向周围公开。

寝言は寝て言え、率直にそう思った。 梦话就该在梦里说,他直率地这么想。
かろうじで現状果たされているのは③の後半部分だけだ。
勉强能实现的只有③的后半部分。

潔が、自分とこれらのくだらない文字列をしたがっているとは思えなかったが、不愉快な字面を見ていて一つだけ凛の脳裏に浮かぶことがあった。
洁会和自己一样被这些无聊的字符串所吸引,凛无法想象,但看着这些令人不快的字面,凛的脑海中浮现出一个念头。

潔は凛と事に及ぶ際に、頑なにキスをしなかった。しないというよりは、どう見ても我慢しているという表現が適している。
洁在与凛发生关系时,坚决不接吻。与其说不接吻,不如说明显是在忍耐。

最初はお互い初めてで慣れない行為も、回数を重ねれば、凛はすぐに潔が何をして欲しいのかが分かるようになった。
起初彼此都是初次,不习惯的行为,但随着次数增多,凛很快就明白了洁想要什么。

はじめは恥ずかしいからと腕で隠された顔も、終わりの頃になればそんな余裕もなくシーツの上に落ちる。そうして露わになった、ぼうっと理性が切れかけた丸い瞳はじっとこちらの唇を見ていることが多かった。
起初因为害羞而用手臂遮住的脸,到了结束时已经没有那种余裕,直接落在床单上。就这样暴露出来的、恍惚得快要失去理智的圆圆眼睛,大多时候都在盯着这边的嘴唇。

1度それを察して口を重ねようとしたことがあったが、潔は馬鹿みたいに力の抜けた手で凛の口を塞いで辛そうに首を振った。
曾经有一次,凛察觉到这一点,试图再次开口,但洁却用无力得像傻瓜一样的手捂住了凛的嘴,痛苦地摇了摇头。

その時は、何らかの理由があってキスはしたくないという意思表示と受けとり、それ以来5年間、一切キスをしたことはない。
那时,凛理解为洁不想接吻的某种理由,从此五年间,再也没有接过吻。

相変わらず潔の視線は口元をフラフラしていることがあったが、首筋に噛み付こうと顔を近づこうとした時ですらビクリと避けられるので、凛としても別に無理にしようという気にもらなかった。
尽管洁的视线有时仍会飘向凛的唇边,但即便凛试图靠近他的脖子,也会被他微微避开,因此凛也并不觉得有必要勉强。

だからこそ驚いた、付き合おうという言葉に。 正因如此,才对那句“交往吧”感到惊讶。
曖昧でぐちゃぐちゃだけどこれでいいと思っていた。サッカーという結び付きはそれだけのように思えて、自分たちにとっては永遠だったから。5年間積み上げてきたものに、フィールド外の二の次のことで亀裂が入るのは御免だったのだ。
虽然模糊不清、乱七八糟,但我觉得这样就好。足球这个纽带似乎仅此而已,对我们来说却是永恒的。五年来积累的一切,我不希望因为场外次要的事情而产生裂痕。

――
「ただいまー!シャワー使っていい!?」 「我回来了!可以用淋浴吗!?」

ドアを開けるや否や、いつもよりワントーン高い潔の大きな声がリビングの方まで響き渡った。
门一开,比平时高了一个八度的洁的大嗓门就响彻了整个客厅。

1日考えても分からないことを考えさせられ、趣味のホラー映画にも集中できなかった凛にとっては大変耳障りなそれに対して、うるせえ!とヤジのように飛ばした。潔は酔っているのか、声デカ!と大袈裟な笑い声を上げた。ムカつく。
对于被强迫思考了一整天也没想明白的事情,连喜欢的恐怖电影都无法集中注意力的凛来说,那声音非常刺耳。他忍不住大喊:“吵死了!”洁似乎是喝醉了,夸张地大笑道:“声音真大!”让人火大。

「はー、さっぱりした。日本の夏ってやっぱ湿気すごいな」
「啊——,清爽了。日本的夏天果然湿气很重啊。」

ものの30分で入浴を済ませたらしい潔は、Tシャツとハーフパンツを身につけてリビングへとやって来た。以前、シャワー後に髪を乾かさずに凛の家のリビングに足を踏み入れて怒られてから、潔はきちんと脱衣所で髪を乾かしてからそばに来るようになった。
似乎只用了 30 分钟就洗完澡的洁,穿着 T 恤和短裤来到了客厅。自从上次洗完澡没吹干头发就闯进凛的家被骂后,洁就养成了在更衣室吹干头发再过来的习惯。

「凛はもう風呂入ったの?」 「凛已经洗过澡了吗?」
「入った」 「洗过了」
「あ、これこの前やってた映画じゃね?もうサブスク来たんだ」
「啊,这不是之前看的那部电影吗?已经上架订阅了啊」

缶ビールをプシュ、と開けながら、潔は当たり前のように凛の隣へと腰掛ける。革張りの高級感のあるソファはそこまで広くない。スポーツをやっている男2人が座ればピッタリサイズである。風呂上がりの火照った身体が、あまりにも遠慮なくぶつかってくる距離感だ。
洁一边打开罐装啤酒,一边理所当然地坐在凛的旁边。皮质的高级沙发并不宽敞,两个运动型的男生坐下正好合适。刚洗完澡的身体还带着热度,距离近得几乎毫无顾忌地碰触。

「おい、狭えよ」 「喂,太挤了吧」
「そんなこと言っても、ソファこれしかないし。俺もテレビ見たい」
「就算你这么说,沙发也只有这一个啊。我也想看电视。」

「チッ」 「嘁」
「これどんくらい怖いの?」 「这有多恐怖啊?」

潔の世間への人当たりがワンクッション置かれて、丁寧に整えられるのに反比例して、凛に対する態度は反比例するように豪快なものに変わっていった。元々サッカーが絡めば遠慮のなかった物言いが、2人で過ごす時間でも顔を出し始めるようになっている。
洁对世人的态度经过一番精心修饰,反而与对凛的态度形成鲜明对比,变得愈发豪爽。原本在足球相关话题上就直言不讳的他,如今在两人共度的时光中也逐渐显露出这一面。

「もう終わる」 「已经结束了」
「え、まじか」 「诶,真的吗」

残念、と映画は諦めたのか、潔はポケットからスマホを取りだして弄り始める。凛が横目で画面を盗み見ると、SNSで近日中に放送されるテレビ番組の告知をしているらしい。
看来是放弃了看电影,洁从口袋里掏出手机开始摆弄。凛用眼角偷瞄屏幕,似乎是在 SNS 上发布即将播出的电视节目的预告。

潔は、そのままフラフラと頭を傾け、凛のいる方の肘掛の方に後頭部を着地させた。当然、上半身が凛の太ももの上に乗っかる形になるが、潔は一切の遠慮なくSNSに勤しんでいる。
洁就这样懒洋洋地歪着头,把后脑勺靠在了凛所在的那一侧的扶手上。当然,上半身也就顺势搭在了凛的大腿上,但洁毫不客气地继续沉迷于 SNS。

「おい」 「喂」
「何……って顔怖」 「何……你这表情真吓人」

いいじゃん、たまには。と凛のTシャツに顔を埋めるようにしながらこちらを見上げた潔は、伸ばしてきた手で勝手に前髪を持ち上げて、悪戯っぽく笑った。
偶尔这样也不错嘛。凛的 T 恤上,洁埋着脸抬头看向我,伸出手指随意撩起我的刘海,调皮地笑了。

今だけ一緒に使っている同じシャンプーと、僅かなアルコールの匂いが混じりあって顔の下で溶けていて、どうにも調子が狂わされた。舌打ちを一つ、映画に集中する。
混杂着此刻共用的同款洗发水与微弱的酒精气息,在脸颊下交融消散,搅得我心神不宁。我咂了咂舌,努力将注意力集中在电影上。

数分すれば映画はエンドロールが流れ始めた。時間的にもう1本短いものが見れそうだと凛がリモコンを手に取ると、なあなあ、と人の足を枕のように使う潔がおもむろにTシャツの袖を引っ張る。
几分钟后,电影开始播放片尾字幕。凛拿起遥控器,正想着时间还够再看一部短片,这时,把别人的腿当枕头用的洁缓缓地拉了拉 T 恤的袖子,轻声唤道:“喂,喂。”

「明日夜空いてたら、夕飯食い行かね?この前知り合いに聞いた和食屋、凛が好きそうなんだよな」
「明晚要是天气好,一起去吃晚饭吧?之前听朋友推荐的和食店,感觉凛会喜欢的那种。」

下方向から眼前に向けられ、すいすいとノールックでスクロールされた画面には、日本人なら垂涎ものの和食の写真が並ぶ。潔は、普段からよく知人から聞いたおすすめの店に凛を連れていく。
从下方滑至眼前的屏幕上,流畅地滚动着无需多看的画面,排列着让日本人垂涎欲滴的和食照片。洁经常带凛去从熟人那里听来的推荐店铺。

「……」
「18時に予約していい?」 「18 点可以预约吗?」

凛の無言はYESと知ったる潔は、嬉しそうに画面を操作し始めた。紹介制の店らしくて、ずっと狙ってたんだよなあ、と言うその声は、時々行儀悪く人の上で傾けていた缶ビールのブーストを抜きにしても、軽く弾んでいた。
凛的沉默即表示同意,洁兴奋地开始操作屏幕。这家店似乎是介绍制的,他一直很向往,那声音即使不提时不时在别人头顶上倾斜的罐装啤酒,也轻快地跳跃着。

嬉しそうな表情は、試合中見る好戦的なそれとは違う。部屋中がぬるい空気に満たされているようで、何がそこまで嬉しいのかと潔の顔をじっと見つめるが、やはり分からない。
他脸上那抹愉悦的神情,与比赛时所展现的好战姿态截然不同。整个房间仿佛都弥漫着一种温暖的氛围,洁不禁凝视着他的脸,心中疑惑究竟是什么让他如此开心,但终究还是无法参透。

「おい」 「喂」
「んー?」 「嗯?」

声をかければ、大きな青い双眸が真っ直ぐに凛を見上げた。昨日自分に付き合おうと言った男、一般的に言えば自分のことが好きだと思われるその男。ピッチの中では殺したいほど憎いはずなのに、いつの間にかプライベートの懐にするりと入ってきたその男。
一开口,那双大大的蓝色眼眸便直直地望向凛。昨天说要和自己交往的男人,一般而言就是对自己有好感的那个男人。在球场上本该恨不得杀了他,却不知何时悄悄进入了私人领域的那个男人。

「?何だよ。そんなに見るなって」 「?干嘛啊。别那样盯着看啊」

嬉しそうに綻んでいた瞳は、途端に困惑したように海を泳ぐ。アルコールと風呂上がりで元々火照っていた頬にさらに赤みが差したことから、本当に照れているようであった。
原本欢快的眼眸,瞬间如游入大海般困惑地游移。酒精和出浴后的燥热本已让脸颊泛红,此刻更是增添了一抹绯色,仿佛真的害羞了。

耐えられずにふいっと視線ごと背けられた顔に、凛の腕が伸ばされた。乱暴に顎を掴んで自分の方を向かせながら、我ながらこの男に侵されていると思った。こうしてぬるまったい空気に呑まれるのは癪だが、どうにも手が止まらない。
无法忍受地突然转过脸去,凛伸出手臂。粗暴地抓住下巴,迫使对方转向自己,心中不禁觉得这个男人正在侵犯自己。虽然讨厌这样被温暖的空气吞没,但无论如何手都无法停下。

「あ……」 「啊……」

付き合ったら、キスをする。インターネットにはそう書かれているが、目の前の男の中では違ったらしい。近づいてきた凛の口を5年前と同じように塞いだ潔は、明らかに熱に呑まれた表情をしているのに、拒む手のひらにはしっかり力が入っていた。
交往了就会接吻。网上是这么写的,但眼前这个男人似乎不一样。洁像五年前一样堵住了靠近的凛的嘴,尽管脸上明显带着被热情吞噬的表情,但拒绝的手掌却充满了力量。

「……あ?」 「……啊?」
「ご、ごめん」 「对、对不起」

じゃあお前は、何で付き合おうなんて言ったんだ。 那你为什么会说要交往呢。
直訳すればキスしたいです、とも取られかねないその言葉を口にすることは凛には到底できる訳もなく。
那句话直译过来可能会被理解为“我想吻你”,凛无论如何也不可能说出口。

「寝る」 「睡觉」
「え」 「诶」

付き合おうと言ったと思えば、キスはできないと言ったり。全くもって理解不能だ。プレー中に考えていることはお互い手に取るように分かるのに、今目の前の男が考えていることは分からない。
以为他说要交往,结果又说不能接吻。真是完全无法理解。比赛时彼此的想法都一清二楚,可现在眼前这个男人在想什么却搞不懂。

素早い動作でテレビを消すと、潔の頭が落ちるのも気にせす無遠慮に立ちあがり、スタスタと寝室へと足を進める。後ろからぺたぺたと裸足床を弾く音がするが、関係ない。
迅速地关掉电视,洁的头掉下来也不在意,毫不客气地站起来,快步走向卧室。身后传来光脚踩在地板上的啪嗒声,但无关紧要。

「な、なあ、凛。待てって」 「喂,凛,等等啊」

潔の焦ったような声も無視して、薄暗い寝室の電気もつけずに、男2人が寝ても十二分に広いキングサイズのベッドに潜り込んだ。
无视洁焦急的声音,两人潜入了昏暗卧室中未开灯的、即使睡下两人也绰绰有余的特大号床。

「うるせえ。俺は寝る」 「吵死了。我要睡了」
「や、勘違いさせたかもしんないけど、俺キスしたくない訳ではなくて!」
「啊,可能让你误会了,但我并不是不想亲你!」

潔は遠慮のない力で肩のあたりを勢いよく揺さぶってくる。お互いの丈夫さが分かっているがゆえに、こういう事はよくある。
洁毫不客气地用力摇晃着我的肩膀。因为我们彼此都清楚对方的强健,所以这种事时有发生。

「凛ってば」 「凛酱」

プロになってから、昔より筋肉が安定してついた潔によって布団が引っペがされ、後ろから羽交い締めにするように、胸の前に腕を回して固定を試みられた。
成为职业选手后,肌肉比以前更稳定地增长的洁被被子掀翻,从背后被紧紧抱住,试图用双臂环抱在胸前固定住。

背中に感じる体温が想像より高く、振り払おうと上に挙がった手をそのまま進めるのが躊躇われた。
背上感受到的体温比想象中更高,想要挥开而举起的手,却因犹豫而停滞不前。

「りん」 「凛」

声音が柔らかいものに変わり、腰あたりに回されていた潔の手が少し下の位置へと滑った。
声音变得柔和,环绕在洁腰间的手缓缓下滑至稍低的位置。

「勃ってる」 「硬了」
「……死にてえってことか?」 「……想死吗?」
「何でだよ、物騒だな」 「为什么啊,真危险」

今夜はそこそこ生理現象に素直な自分の下半身を恨みながら、中々屈辱的なシチュエーションに凛の拳はぎゅっと握られている。
今夜,凛紧握着拳头,身处颇为屈辱的境地,心中怨恨着自己那对生理现象颇为顺从的下半身。

潔の声音は楽しそうな、嬉しそうなものに戻っていた。首筋に小さく口付けられる。湿っぽい柔い感触が、凛の背後をゆっくりと滑る。
洁的声音又变得愉快而开心了。脖颈上被轻轻吻了一下。湿润柔软的触感,缓缓滑过凛的背部。

おい、と流石に止めようと顔を向けると、きょとんとした表情でこちらを見ているその顔は、少し赤みが増していた。飲んだ後にバタバタと動いたせいで、酔いが回っているようだった。
喂,正想阻止时,她转过头来,一脸茫然地看着这边,脸颊微微泛红。似乎是因为喝了酒后又慌乱地动来动去,醉意上头了。

「え、しねえの?」 「诶,不做吗?」

微睡んだ瞳が困惑の波に揺れる。下半身に置かれていた手がふわふわと上下に動いた。動きに合わせて反応するのは、生理現象を通り越して反射だ。
微睡的眼睛在困惑的波涛中摇曳。置于下半身的手轻轻地上下移动。随之而动的,是超越生理现象的反射。

こういうことはできて、キスはできない。今まで通りと言ったらそうであるが、それならば付き合うとは、何だったのか。一度放棄した問題と再び直面する。思考の読めない男は、さらに身体を擦り寄せてきている。合わせて勝手に下半身が首をもたげる。
这种事可以做,接吻却不行。如果说和以前一样,那确实如此,但那样的话,交往又算什么呢。曾经放弃的问题再次摆在面前。无法揣摩心思的男人,进一步贴近身体。随之而来的是,下半身不由自主地抬起头。

「凛、こっち見ろって」 「凛,看这边!」

固まったまま振り向きもしなくなった凛の反応が不満だったらしい潔は、少し強引に肩を押すと自分の身体を持ち上げて唇の横に口付ける。
凛僵在原地连头也不回的反应似乎让洁感到不满,他稍稍强硬地推了推凛的肩膀,然后抬起自己的身体,在凛的唇边轻轻一吻。

その行動が、凛の中で何かの一線を越えさせた。思考が止まる。こいつの考えていることなど知らない、どうにでもなればいい。
那个举动,让凛心中某种界限被跨越了。思考停滞。这家伙在想什么我根本不知道,随便怎样都好。

起き上がって、自分より少しだけ線の細い身体を組み敷いた。ぼんやりとした青い色は期待を含んだような、緊張した視線をこちらに向けている。
翻身坐起,将比自己略显瘦削的身躯拥入怀中。那双朦胧的青色眼眸,带着期待与紧张,朝这边投来视线。

「逃げたら、次はねえぞ」 「要是逃了,下次可就没这么简单了。」

先程より酒の匂いが強くなった唇に噛み付く。脳裏に、出会った頃の潔の顔が浮かんだ。最初からムカつく奴だった。口の中から漏れ出した生暖かい吐息ごと閉じ込めて、息の根を止めてやりたい。そう思いながら舌を差し込めば、んぅ、と苦しそうな声が漏れ出す。やがて恐る恐る、不器用に差し出された舌を何度か掬いとった後に唇を離した。
刚才开始酒味就变浓了的唇上咬了一口。脑海中浮现出刚遇见时洁的脸。从一开始就是个让人火大的家伙。想把从嘴里漏出的温热吐息一并封住,让他停止呼吸。这样想着把舌头伸进去,就发出了“嗯”的痛苦声音。不久后小心翼翼地、笨拙地几次舔舐伸出的舌头后,才松开了唇。

「くるしい」 「痛苦」
「下手くそ」 「真差劲」
「なんでお前は慣れてるんだよ」 「你怎么这么熟练啊」

腰の位置を落とせば、触れた潔の下半身も熱を持っていた。まだ反応できるということは、そこまでベロベロに酔っ払ってもいないのだろう。
如果降低腰部的位置,触碰到的洁的下半身也带着热度。还能有所反应,说明他并没有醉到烂醉如泥的地步。

所謂お互いのファーストキスを経て、妙にすんなりと果たされたそれに潔は少しだけ不満そうだった。
经历了彼此的初吻,那出乎意料顺利完成的吻,洁似乎有些许不满。

「フランスの美人なお姉さんとキスしたのか?」 「和法国的美女姐姐接吻了吗?」
「舐めたこと言ってると殺すぞ」 「敢小看我,就宰了你」
「じゃあこれが初めてってこと?凛ってキスも上手いのか、よ、んっ……」
「这么说,这是第一次?凛的吻技也很棒嘛,嗯……」

眉根を寄せてとぼけた事を言う潔の口は、凛によって再び塞がれた。ぐり、と勃ちあがった陰茎同士が擦り合わされて、組み敷かれた身体が我慢できないように震えれば、お互いそのまま取り憑かれたかのようにキスを交わした。
洁装傻地皱起眉头,却被凛再次堵住了嘴。勃起的阴茎相互摩擦,交缠的身体因无法忍受而颤抖,两人仿佛被附身般交换了一个吻。

――

「今までキスしなかったのは、付き合ってなかったからか」
「之前没接吻是因为还没交往吗?」

「え、このタイミングで聞くの!?」 「诶,这时候问这个!?」

短いようで長い時間温められた疑問が素直に吐き出されたのは、付き合って初めての晩でも、全てが終わった事後でもなく。翌日、凛は朝のストレッチを終えて、潔は今日もメディアの取材に向かうべく朝食を取っている最中だった。
那句酝酿已久却看似短暂的疑问,既不是在交往初夜,也不是在一切结束后的事后。而是在第二天,凛完成了早晨的拉伸,洁正准备去接受媒体采访,吃早餐的时候。

「や、その通りなんだけど……」 「啊,确实是这样……」
「それが、何でこのタイミングなんだ」 「为什么偏偏是这个时候……」
「全部を今詰めるじゃん……」 「现在就要全部解决……」

今日は昨日より時間に余裕があるらしく、トーストにジャムを載せながら気まずそうに口をもごもごと動かした潔を逃がさないように、ダイニングテーブルまで向かって目の前に腰掛ける。
今天似乎比昨天时间充裕些,洁一边往吐司上抹果酱,一边尴尬地蠕动着嘴,我赶紧走到餐桌前坐下,不让他溜走。

「だってさ、あんなことしてる上にキスまでしたら、絶対凛のこと好きになるから」
「因为啊,那样做了之后还接吻的话,绝对会喜欢上凛的」

ドキマギとした手つきでは、ジャムは全く平等に広がっていない。歪な塗られ方をしたトーストを一口齧ることで、自分の言ったことの羞恥を逃がしているようだった。
用笨拙的手法涂抹的果酱,完全没有均匀分布。咬一口涂抹得歪歪扭扭的吐司,仿佛在逃避自己刚才说的话带来的羞耻感。

「昔は、そういうの邪魔になると思ってて」 「以前,总觉得那样会碍事。」

咀嚼を数回。嚥下されたトーストのカスが小さな音を立てて皿の上に落ちた。言いたいことは、何となく凛にも伝わっていた。
咀嚼了几下。被咽下的吐司碎屑发出轻微的声响,落在了盘子上。想要表达的意思,似乎也隐约传达到了凛那里。

「でももう、キスしたくて仕方ないから言った」 「可是,我已经忍不住想吻你了,所以才说的。」

で、昨日の夜は、一瞬怖気付いた!終わり! 所以,昨晚有那么一瞬间,我害怕了!完结!
と、全てを白状させられた潔は、もうアルコールなんて抜けきっているはずなのに、耳まで朱色に染め上げられている。
被逼得全盘托出的洁,明明应该已经酒醒了,耳朵却红得像染了色一样。

思ったより、目の前の男はシンプルな行動原理で動いていたらしい。連絡や会うことで自分を縛りたかった訳でも、お互いを知りたかった訳でも、季節のイベントを2人で楽しみたかった訳わけでも、はたまた関係を周りに言いふらしたかった訳でもないらしい。
似乎眼前的男人行动原理比想象中更为简单。并非想通过联系或见面来束缚自己,也不是想彼此了解,更不是想两人一起享受季节活动,甚至也不是想向周围宣扬关系。

キスを我慢できなくて告白した、その理由は思ったよりもこいつらしいと凛に思わせた。いつになっても、ぬるくてムカつく男だ。
忍不住亲吻而告白,理由是比想象中更让凛觉得这家伙像样。无论何时,都是个让人恼火的温吞男。

「何でよりによって朝からこんな話すんだよ。この話題は昨日の夜するべきだろ、絶対」
「为什么偏偏一大早就说这种事啊。这种话题昨晚就该说了吧,绝对。」

「軟弱野郎がイったままへばるからだろ」 「软弱的家伙射完就瘫倒了吧」
「だって!お前、昨日、4回も……!」 「因为!你昨天,居然……!」

目まで赤くさせて、よっぽど文句をつけたかったのか勢いよく立ち上がった潔が、普段は感じたことの無い腰の痛みに大きな呻き声をあげて力なく椅子の上に戻る。
洁气得眼睛都红了,大概是真的很想抱怨,猛地站了起来,却因平时未曾感受到的腰痛而发出一声大叫,无力地坐回了椅子上。

「俺は明日仕事だからもう止めようって何回も言ったのに……」
「我明明说了好多遍明天要上班,该停了……」

「キスしたかったお前だけが得してたんじゃ、割に合わないからな」
「明明是你想接吻的,只有你占了便宜,这不公平啊」

「俺は!身体に実害が出てるんですけど!」 「我可是!身体已经出现实际伤害了啊!」

そんなことを言ったら、こちらだって昨日は趣味を満足に楽しめず、スマホの検索履歴には妙なワードが残ってしまった。心の中でそう思いながら、ぼんやりと目の前の喜怒哀楽の激しい表情を眺める。
说了那种话,我这边昨天也没能好好享受兴趣,手机搜索记录里还留下了奇怪的词汇。心里这么想着,茫然地看着眼前喜怒哀乐交织的激烈表情。

「あ、のんびりしてたら時間やばい。凛、今日の店の住所、後で送るから!18時な!」
「啊,悠闲过头了,时间要来不及了。凛,今天店里的地址我晚点发给你!18 点哦!」

「腰が引けてんぞ、クソフィジカル」 「腰都缩了,这该死的身体素质」
「〜〜っ」 「〜〜」

慌てて立ち上がり、忙しなく家を出る準備をする潔は、明らかに下半身がつらそうだ。今はフィールド外、凛の揶揄いに即座に反応できなかった潔は、子供のように悔しそうな表情を置き土産に部屋を後にした。
慌忙起身,急匆匆地准备出门的洁,明显下半身疼痛难忍。此刻不在赛场上,面对凛的调侃,洁无法立即回应,带着孩子般懊恼的表情,他离开了房间。


『本日は、潔世一選手に生出演いただいています!』 『今天,我们有幸请到了洁世一选手亲临现场!』

またか。 又来了。
今日こそ趣味の映画三昧と決めていた凛が、軽めのトレーニングを終えてテレビをつけた正午には、朝情けない体勢でこの家を飛び出した潔が映し出されていた。生放送らしく、事情を知っている手前、僅かに疲れは感じるもののいつもより更に外向きの笑顔を浮かべている。
凛今天本打算尽情享受电影,却在完成轻松的训练后打开电视的中午时分,看到了清晨狼狈逃离家中的洁出现在屏幕上。似乎是现场直播,知道内情的凛虽然感到些许疲惫,但脸上浮现出比平时更加外向的笑容。

いくつかサッカーに対する質問や会話が行われた後に、番組は一旦企画のコーナーに入るらしかった。恋愛運をあげるメイクアップ術、という華やかなポップアップが画面上に出ると、それに合わせた質問が潔にも振られる。
在进行了几个关于足球的提问和对话后,节目似乎暂时进入了企划环节。屏幕上出现了“提升恋爱运的化妆术”这样华丽的标题,洁也被问到了相关问题。

『恋愛運といえば、潔選手は今女性人気がすごいですよね!』
『说到恋爱运,洁选手现在可是非常受女性欢迎呢!』

予想通り、つまらない話題振りだ。テーブルに置いていたマグカップを手に取る。
正如预料,是个无聊的开场白。我拿起桌上的马克杯。

『いやあ、俺より糸師凛選手の方が人気なんじゃないですかね』
『哎呀,比起我,糸师凛选手不是更受欢迎吗?』

ぶ、と傾けていたコーヒーが溢れそうになる。突然潔の口から飛び出した自分の名前に、柄にもなく心臓がバクバクとする。無論、顔には全く現れないが。
噗,倾斜的咖啡差点溢出。突然从洁的口中听到自己的名字,不知为何心脏扑通扑通地跳动。当然,脸上完全没有表现出来。

そのトーク展開は事前に打ち合わされていたのか、司会のアナウンサーも驚くことなくその話題を広げていく。
这个话题的展开是事先商量好的吗?主持人也没有表现出惊讶,继续深入这个话题。

『凛選手と言えば、プライベートはかなり謎に包まれた方ですが、潔選手は青い監獄時代から交流があって仲が良いんですよね?』
『说到凛选手,他的私生活可是相当神秘,不过洁选手从蓝色监狱时期开始就有交情,关系很好吧?』

『仲が良い……んですかね?』 『关系很好……是吗?』

冗談交じり且つ曖昧な潔の反応に、スタジオからワッと笑いが起きる。これは多分素の反応だ。
混杂着玩笑且含糊不清的洁的反应,让演播室里爆发出一阵笑声。这大概是他最真实的反应了。

『潔選手なら凛選手の好みのタイプとかもご存知ですか?』
『洁选手对凛选手喜欢的类型也了解吗?』

マグカップを握る手に無意識に力が入った。あいつ、後でしばくと決めながら、うーん、と顎に手をあてる潔の次の言葉を待った。殺したくて憎い、自分の恋人の言葉を。
握着马克杯的手不自觉地用力。那家伙,待会儿一定要教训他,一边这么想着,一边嗯地一声将手放在下巴上,等待洁的下一句。那句让自己恨得想杀了他、关于自己恋人的话。

『凛は、ああ見えて恋人にはゾッコンですよ。タイプは、そうだなあ。面倒見のいい年上とかですかね』
『凛啊,别看他那样,对恋人可是超级痴迷的。喜欢的类型嘛,应该是那种会照顾人的年上吧。』

そのあまりに具体的な言葉は打ち合わせとは違うものだったのか、アナウンサーの少し驚いた表情に、スタジオの観客席から黄色い悲鳴が上がった。
那过于具体的言辞似乎与事先的安排不符,播音员略显惊讶的表情引发了演播室观众席上的一阵黄色尖叫。

本当に、腹立たしい男だ。昨日自分の膝の上で擦り寄って、抱きついてきたのは。キスをしたいから付き合わないかと言い始めたのは、どこのどいつだったか。
真是的,真是个令人恼火的男人。昨天还自己蹭到我膝盖上,抱了过来。是谁一开始说因为想接吻才不交往的。

してやったり、という顔で人懐っこい笑みを浮かべた潔の青い瞳が、画面の向こうから凛に仕返しだと語っている気がした。前とは違う、その目は確かにこちらを見ている。
洁那双青色的眼眸,带着一丝得意与亲切的笑意,仿佛从屏幕那端向凛传递着报复的讯息。与之前不同,那双眼眸确实正注视着这边。

ゾッコンなんて安い言葉、この関係には似合わないし、認めるつもりは毛頭ない。
这种关系岂是“迷恋”二字能概括的,我根本无意承认。

キスをしたら好きになってしまう、好きだからキスをしたい。キスをしたいから付き合いたい、好きだから付き合いたい。何が始まり、何が最適で、何が最善かは、昔も今もこれからも分からないのだろう。
一吻便陷入爱河,因为喜欢所以想亲吻。想亲吻所以想交往,因为喜欢所以想交往。什么才是开始,什么才是最佳,什么才是最好,无论是过去、现在还是未来,恐怕都无从知晓吧。

ただ、昨晩交わしたキスが、どうしようもなく底なし沼のように甘ったるいことだけが、凛にとっての真実だった。
只是,昨晚交换的那个吻,对凛来说,就像无底沼泽般甜腻得无法自拔,才是唯一的真实。

评论

  • 穴子飯

    ありがとうございました…

    2023年7月11日回信
  • やさき
    2023年6月30日回信
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