7月のソウルは天気が悪い。東京と同様である。ただ、ソウルは、東京に比べるとかなり涼しい。クーラーが無くても生きていけるレベルの気温である。
七月的首尔天气不好。和东京一样。只不过,首尔比东京凉快不少。是那种没有空调也能活下去的气温。
ソウルには過去何回か来ていて、幾度か、北朝鮮との国境を見てみたいなと思ったのだけど、国境は、近いと言えば近いけれど、二泊三日の旅程に組み込むにはやや遠い気もするという事情により、一度も訪れたことがなかった。
我过去来过首尔几次,有好几次都想去看看与朝鲜的国境线,但国境线说近也近,但要安排进两天三夜的行程里又感觉有点远,所以一次也没有去过。
僕は、頭の40%を国境訪問に使い、どうしようかな、行ってみようかなと考えていた。一方で、頭の60%は腹が減ったということの処理に使われていた。踏十里というエリアにいて、気になっていた冷麵屋が近くにあったので行ってみることにした。
我的大脑 40%在考虑访问国境的事情,想着要不要去看看。另一方面,60%的大脑在处理肚子饿的问题。我在踏十里一带,附近有一家我一直很感兴趣的冷面店,所以决定去看看。
小さな町工場のようなものが多いエリアなのか、だるそうにしているおじさんがどこからともなく現れて、また、去っていく。
这里是小型工厂聚集区吗,无精打采的大叔不知从哪里冒出来,然后又消失了。
店には着いたのだけど、残念なことに数人が並んでいるようだった。ソンチョン・マッククスというお店だ。ラーメンみたいなもので提供も食べるのも時間がかからないので、回転は速いらしく、すぐに入れた。
我到了店里,但遗憾的是,似乎已经有几个人在排队了。这家店叫松亭荞麦面。因为是像拉面一样的东西,上菜和吃都花不了多少时间,所以翻台率很快,我很快就进去了。
ソウルの中心部では、日本人ですオーラを出していると、日本語のメニューを持ってきてくれたり、何だったら、日本語で説明をしてくれたりするのだけれど、ここは、日本語も英語もあまり通じないようだった。
在首尔市中心,如果你散发出“我是日本人”的气场,他们会给你拿来日语菜单,甚至还会用日语向你解释,但在这里,日语和英语似乎都不太管用。
僕は、Googleの翻訳機能を使って、メニューを見て、指をさして、注文をした。心優しそうな同い年くらいに見えるお兄さんは、韓国語で何かを丁寧に説明してくれたが、残念なことに、それが何なのかは全く分からなかった。
我用谷歌翻译查看菜单,指着菜单点餐。一位看起来很善良、和我年纪相仿的哥哥用韩语耐心地向我解释着什么,但遗憾的是,我完全不知道他在说什么。
あ、しまったと思った。なんでも、韓国では、先酒後麺という文化があり、日本のそばのように、酒を先に楽しんで、最後に麺をつるると食べるというようなスタイルがあるらしく、ソジュを頼みたかったのだけど、気づいたら、心優しそうな店員は忙しそうな厨房の方へと去ってしまっていた。
啊,糟了。据说韩国有一种“先酒后面”的文化,类似于日本的荞麦面,先喝酒,最后吃面条。本来想点烧酒的,但回过神来,热心的店员已经走向了忙碌的厨房。
何はともあれ、冷麺はやってきた。心優しそうな店員は、やはり韓国語で何かを簡単に説明してくれたが、何のことなのかはいまいちわからなかった。
总之,冷面端上来了。看起来很热心的店员果然用韩语简单地说明了什么,但我不太明白是什么意思。
なんと涼しげだろうか。韓国における冷麺はスープがあるものと無いものの2種類あり、スープありのほうの冷麺は北朝鮮が発祥らしい。スープを飲んでみる。よく冷えていて、薄いうまみが口に広がる。すごいうまい。水キムチの汁がスープにつかわれているようだ。
多么凉爽啊。韩国的冷面分有汤和无汤两种,有汤的冷面据说发源于朝鲜。尝一口汤,冰凉清爽,淡淡的鲜味在口中蔓延,非常好喝。汤里好像加了水泡菜的汁。
僕は、日本の蕎麦がかなり好きで、同じく、蕎麦粉から作られている韓国の冷麺を食べるにあたり、とはいえ、日本の蕎麦の完成度はなかなかのものであって、その洗練された澄んだ味わいはある種の敬意が必要なレベルで、冷麺に簡単には負けないぞなどと思いながら食べたのだけど、何だ、この繊細な美味さは......とたちまち唸ってしまった。
我非常喜欢日本的荞麦面,所以在吃同样是用荞麦粉做的韩国冷面时,心里想着,日本荞麦面的完成度可是相当高的,那种洗练清澈的味道,是需要带着敬意去品尝的,冷面可没那么容易打败它。结果,这细腻的味道是怎么回事......我立刻就赞叹不已。
韓国に来るたび、冷麺は食べていたのだけど、そこまで抜群にうまいものではないかなと思っていたのだけど、僕は謹んで認識を改めるにいたった。また、付け合わせに出てきたポッサムが冷麺によく合うのだ。豚の油が繊細な冷麺を覆うようにして纏わって、噛めば噛むほどうまかった。
每次来韩国都会吃冷面,但总觉得没有特别好吃。现在我谨此改变我的看法。另外,一起上来的猪肉片非常适合冷面。猪油包裹着细腻的冷面,越嚼越香。
麺が端正な細さで硬さもちょうどよい。 面条粗细均匀,软硬适中。
周りの席の人は唐辛子ペーストを救って、大根?のつけものに混ぜていたので同じようにやってみる。
周围座位的人都在捞辣椒酱,拌到萝卜?腌菜里,我也学着他们的样子做。
唐辛子をまとった漬物をポッサムにのせて食べる。そして、蕎麦湯を飲む。この冷麺、漬物、ポッサム、蕎麦湯はかなりの文化的な強度を持っているのではなかろうか!と僕は、端のほうの席で一人感嘆した。
把裹着辣椒粉的腌菜放在猪肉片上一起吃,再喝一口荞麦汤。这冷面、腌菜、猪肉片、荞麦汤,难道不是具有相当的文化底蕴吗!我独自一人坐在角落的位置上,不禁感叹。
店に入る前は曇っていたのだけど、店を出たら晴れていた。天気が悪くて、国境まで行って、何にも見えなかったら行ってもしょうがないかなあと心配だったのだけど、これくらいであれば大丈夫か、北朝鮮料理も食べたところだしなと思い、行ってみることにした。
进店前还是阴天,出店时却放晴了。原本还担心天气不好,跑到国境也什么都看不到就白跑一趟了,但现在看来应该没问题。而且也尝过了朝鲜料理,于是决定去看看。
冷麺を食べたのはソウルの東側だったので、一回中心地のほうに戻る。すかすかのバスに乗り込んでしばらく寝ていた。あまりの強冷房に震えて起きたら、北朝鮮が見える展望台の最寄りのバス停についていた。
因为吃冷面是在首尔的东边,所以先回市中心。我坐上空荡荡的巴士,睡了一会儿。醒来时,我被强烈的冷气冻得瑟瑟发抖,发现自己已经到了可以眺望朝鲜的瞭望台的最近的巴士站。
スマホで調べると、そこから、歩くと1時間くらいかかり、しかも小高い山の上ということだったので、配車アプリで車を呼んでみることにした。5分ほどしたら、白い車がやってきた。
用手机查了一下,发现从那里步行大约需要 1 个小时,而且还在一个小山坡上,于是我决定用叫车 App 叫辆车。大约 5 分钟后,一辆白色的车来了。
円安の効果などもあり、韓国で日本より安いものはあまり見かけないような状態になっているのだけれど、タクシーとか配車サービスについては日本よりだいぶ安いようだった。冷麺の店を出たときは、結構いい天気だったのだけど、徐々に天気が悪くなってきていた。
日元贬值等因素的影响,在韩国似乎已经很难找到比日本更便宜的东西了,但出租车或网约车服务似乎比日本便宜很多。离开冷面店的时候,天气还不错,但逐渐开始变坏。
日本に似たような田園風景が広がっている。これだけを見て、日本か韓国か判別できる人は少なそうだ。
和日本相似的田园风光映入眼帘。只看这景色,恐怕很少有人能分辨出这里是日本还是韩国。
車で15分くらいで展望台に到着した。すいているようだったけれど、韓国人の人も数人見かけた。
开车 15 分钟左右到达了展望台。 看起来人不多,但也看到了几个韩国人。
入館料はかからないらしい。北朝鮮との関係性について理解を深めましょう的な展示がいろいろある。以下は、国境の鉄柵をアレンジしピアノ線にしたピアノである。これを演奏した動画が流れていた。何とも言えない不協和音だった。
似乎不收取门票。 有各种各样的展览,旨在加深人们对朝鲜关系的理解。 以下是用国境铁栅栏改造而成的钢琴线钢琴。 播放了一段演奏它的视频。 是难以形容的不和谐声音。
ソウルから平壌を経由してパリへ行く電車のモデルのようなものも置いてある。大陸横断鉄道だ。
还有从首尔经平壤到巴黎的火车模型。这是横贯大陆的铁路。
バイデン大統領と岸田首相がいた。 拜登总统和岸田首相在那里。
屋上に上ると、視界が開けた。韓国の国旗がゆっくりとした風を受けて、ゆらゆらと揺れている。
登上屋顶,视野豁然开朗。韩国国旗在缓慢的微风中,轻轻地摇曳着。
視界の下のほう、イムジン川がたおやかに流れている。煙った空気が対岸の北朝鮮をあいまいなものにしている。国境地帯なので、あまり人が住んでいるような感じではないみたいだ。
视野的下方,临津江缓缓流淌。朦胧的空气让对岸的朝鲜变得模糊不清。因为是国境地带,感觉不怎么住人。
晴れていると、これくらいはっきり見えるらしい。双眼鏡があったので、のぞいてみると、ぼんやりといくつかの建物が見えた。
天气好的话,就能看得这么清楚。因为有双筒望远镜,所以试着看了看,隐约能看到几栋建筑物。
振り向くと韓国が見えた。似たような景色ではあるものの、整備された道を車がたくさん走っている。経済の力を感じる。
回头一看,韩国就在眼前。虽然景色相似,但车很多,在整备完善的道路上飞驰。能感受到经济的力量。
僕は、韓国のイ・ランが歌っているイムジン河が好きで時々聞くのだけど、ここで聞かずにどこで聞くのだろうと思って、スマホで、Spotyfyを開き、イムジン河と検索した。
我喜欢韩国的李朗唱的《临津江》,时不时会听一下,心想不在这种地方听更待何时,便在手机上打开 Spotify,搜索了《临津江》。
北朝鮮の歌を、韓国人が日本語で歌っている。 韩国人正在用日语演唱朝鲜歌曲。
イムジン河 水清く 临津江水清又清
とうとうと流る 滔滔不绝地流淌
水鳥自由に むらがり飛び交うよ 水鸟自由自在地成群飞舞
我が祖国 南の地想いははるか 我的祖国 南方故土思绪遥
イムジン河 水清くとうとうと流る 临津江 水清澈潺潺流淌
韓国を歩くと、いろんな側面で、なんと文化的に近しいのだろうと思うことがある。当然ながら、北朝鮮は行ったことはない。僕が生きているうちに、行くことがあるのであれば、平壌の街を歩き、どんなことを思うのだろう。
在韩国走走,会发现很多方面在文化上是如此的接近。当然,我没有去过朝鲜。如果在我有生之年有机会去的话,走在平壤的街道上,又会作何感想呢。
地形図を前にして、何回かイムジン河を聞いていたら、90歳前後に見える女性が、親族らしき男性に、車いすを押されながらやってきた。僕の前で、窓越しの北朝鮮を眺め、二人で、いくつか言葉を交わしていた。この世代の人々は、ここにきて何を思うのだろう。それは軽々しく想像できるようなことではないように思えた。数分で、老女は去っていった。イムジン河はとうとうと流れていた。
在地形图前,我几次听到“临津江”这个名字,一位看起来有 90 岁左右的女性,被一位像是亲属的男性推着轮椅走了过来。她在我的面前,隔着窗户眺望着朝鲜,两人交谈了几句。这个时代的人们,来到这里会想些什么呢?我觉得那不是可以轻易想象的事情。几分钟后,老妇人离开了。临津江依旧滔滔不绝地流淌着。