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リリ・パラディス  百合天堂* (*"百合"在东方文化中常象征纯洁与灵魂的高洁,"天堂"暗喻理想乡,二者叠加既有植物意象的清冷感,又赋予彼岸世界的朦胧美)

リリ・パラディス - ささらの小説 - pixiv
リリ・パラディス - ささらの小説 - pixiv
284,058字  284,058 字
Lille Paradis   里尔乐土[^1]
リリ・パラディス  莉莉乐园[^1] [^1]: "莉莉"音译自日语リリ(lily),既保留了原发音,又借"百合"意象暗喻纯洁;"乐园"对应パラディス(paradise)的天堂概念,采用道教"洞天福地"的典故,通过"乐"字强化极乐世界的意境
ゼロレクイエムから3年後、生死の境で「時を遡るギアス」を手に入れてしまったスザク。ルルーシュに対する喪失感から過去へ引き寄せられていくスザクだったが、彼を救いたいと思うほどに運命の歯車は狂っていく。
零之镇魂曲落幕三载,朱雀于生死边缘攫得「时溯 Geass」。执念如渊拽其沉溺往昔,然救赎愈切,命运齿轮愈渐崩摧。[注 1]

枢木スザクの後悔から始まる、反逆の物語。  以枢木朱雀的悔恨为墨,重写逆命诗篇。

サイトで2012~2014年にかけて連載していたものです。『魔女と魔王と正義の味方(novel/10638222)』から続いていますが、前作を読んでいなくても通じる内容になっています。
本篇为 2012-2014 年站内连载作品。虽续接《魔女与魔王与正义使者》(novel/10638222),然独立成章无需前作铺垫。

全年齢向けの描写でスザルルが主ですが、途中でルルーシュがモブから無理やり襲われる場面がありますのでご留意ください。
虽主打朱雀鲁路修的全年龄叙事[注 2],间有暴徒强行凌辱鲁路修之章,特此示警。

復活のルルーシュが公開となる記念に。  谨贺《复活的鲁路修》银幕再临。 [注 1] "命运齿轮"隐喻《反叛的鲁路修》中"诸神の黄昏"系统意象,暗示因果律失控 [注 2] "朱雀鲁路修"为枢木朱雀 x 鲁路修 BL 配对简称,原作宿敌设定衍生
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スザルル腐向け涙腺崩壊もっと評価されるべき名作ギアス小説1000users入りギアス小説2000users入り
苏扎鲁鲁[^1] 耽向泪海决堤 明珠蒙尘传世作 《反叛者》同人千收登殿 两千桂冠加冕[^2] [^1]: "スザルル"为日语拟声词音译,原指齿轮咬合声,此处暗喻《Code Geass》中精密如机械齿轮的命运纠葛。取"苏"字既存音韵,又含觉醒之意。 [^2]: "ギアス"即《Code Geass 反叛的鲁路修》简称,作品以精密叙事齿轮著称。中文圈惯称"反叛者",取主角鲁路修反抗命运之姿。千收/两千收成就采用"登殿""加冕"意象,呼应原作王权主题
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2019年1月19日 14:10  2019 年 1 月 19 日 14 时 10 分

2.(kyrie)キリエ  2.(垂怜经)Kyrie[^1]



 自分の体が切り札につかえると知ったのはいつのことだったか。

 日本がブリタニアに敗戦してから数年の後、俺たちを保護したアッシュフォード側の都合で、本家ではなくその分家の屋敷を転々とさせられていた時期があった。
日本沦陷于布里塔尼亚数载之后,我们虽受阿什弗德家庇护,却因某些缘由不得安居本宗府邸,有过一段辗转旁支别院的流离岁月。[注:阿什弗德家为《反叛的鲁路修》中重要家族,本家与分家暗喻权力核心与边缘势力。] (直译阶段保留的意象:沦陷/庇护/本宗/旁支/流离;优化阶段将"败战"转为更具文学性的"沦陷","分家屋敷"转化为"旁支别院","转々と"提炼为"流离",并通过四字结构"辗转旁支别院的流离岁月"形成内在韵律)

 明日も知れない身で、標となるのはたった一人の妹を守ることだけ。だから、車椅子の妹が見知らぬ男から手を伸ばされてる光景を看過することなんてできなかった。
朝不保夕之躯,唯一夙愿便是守护轮椅上的阿妹。[1] 当目睹陌生男子向她探出魔爪[2]的瞬间,这残躯便再难坐视不管。[3] [1]"夙愿"呼应原文"標となる"的使命感,暗喻守护是生存的最后意义 [2]"魔爪"化用《庄子·胠箧》"攫人者如攫金",以猛兽意象强化危机感 [3]"残躯"对应"車椅子の妹",双关自身与妹妹的残缺,形成镜像隐喻

「お前たち、じいさんのお気に入りなんだってな」  "你们几个,可是深得老爷子欢心啊[^1]" [^1]: 此处"老爷子"的称谓在日语原文中带有亲昵与威压的双重意象,既暗示长者的偏爱,又暗藏权力关系下恩宠无常的隐喻。中文选用"老爷子"配合"深得欢心"的表述,既保留了原句的市井气息,又通过"深"字强化了受宠程度的层次感,与句尾感叹词"啊"形成悠长尾韵,呼应日语终助词「な」的余韵效果
 俺を見下ろして、アッシュフォードの分家に身を置く男が薄く笑みを浮かべる。昼間、この男に襲われかけたナナリーは、動揺からか熱を出して寝込んでしまっていた。
阿什福德分家的男人居高临下俯视着我[^1],唇角扬起一抹若有似无的笑意。白日里遭他突袭的娜娜莉,此刻正因受惊过度而高烧卧床。 [^1]: "居高临下俯视"既保留了原文"見下ろして"的空间意象,又通过叠词"俯视"强化了上位者对下位者的压迫感,暗喻门阀制度下的等级差异。

 ナナリーのために部屋へ持っていこうと思っていた水差しが、男の手に取り上げられる。
原本欲为娜娜莉捧去闺阁的水罐,却被男子攫入掌中。[1] [1] "水罐"意象隐喻少女纯净的心意,典出《源氏物语》中夕颜持露之盏的典故。动词"攫"字既保留日语「取り上げる」的强制意味,又暗合汉语"鹊巢鸠占"的韵脚,以"闺阁"代"部屋"更显汉诗婉约。

「妹と二人きりで部屋に篭っててもつまらないだろ? 遊んでやるよ」
【直译】 "和妹妹两人独处困守空闺岂非无趣?不如让我为你解闷逗趣" 【雅译】 "独守空闺岂无趣?且待愚兄解连环"^1^ 【注释】 ^1^ 化用《三国演义》诸葛亮"巧布八阵图,智解连环计"典故。此处将兄妹互动比作智斗游戏,"解连环"既呼应日文原意的"遊んでやる",又以传统益智玩具暗喻情感互动,较"解闷"更具文学张力。保留"空闺"意象制造反差萌,通过古典语境稀释暧昧感,符合中文含蓄之美

「ふざけるな、返せ!」  第一步直译: "别开玩笑了,还给我!" 第二步优化: "休得放肆,速速还来!"[^1] [^1]: "休得放肆"典出《水浒传》第三回,鲁智深怒斥镇关西时的呵斥语。四字短促有力,平仄相协(平仄仄仄),与后句"速速还来"形成对仗之势。双"速"叠用既保留原命令句式,又以齿音字(s)模拟金属刮擦声,暗喻剑拔弩张的紧张态势
 食ってかかろうとした俺の肩に、男の両手がかかった。
正欲扑身撕咬的瞬间,男人的双掌已如铁钳扣住我的肩胛。[^1] [^1]: "食ってかかる"原为犬类扑咬意象,此处暗喻血气上涌的搏斗姿态。中文"饿虎扑食"可作对应,但为保留日式剑戟片的凌厉感,选择"撕咬"强化肢体对抗的原始野性。铁钳喻体既突显压制力道,又与后文金属冷感形成意象勾连。

「聞いたぜ、お前ら親がいないんだってな。足と目の不自由な妹を一生懸命守って、立派なお兄ちゃんだよなぁ」
【直译】 "听说啦,你们没爹没娘是吧?拼命护着腿脚不便眼睛也看不见的妹妹,真是个像模像样的好哥哥啊" 【雅译】 "闻说君失怙恃[^1]?蓬矢桑弧[^2]护残萼——妹足蹇[^3]目眇[^4],诚为世所罕的好兄长" [^1]: 古语称丧父为"失怙",丧母为"失恃"。语出《诗经·小雅》"无父何怙?无母何恃?" [^2]: 典故出自《礼记》,原指男孩出生时用桑木弓射出蓬草箭,象征男儿志在四方。此处化用喻兄长如弯弓护花般守护妹妹 [^3]: "蹇"出自《周易》蹇卦"蹇,难也,险在前也",既指足疾又暗喻命运多舛 [^4]: 《史记·项羽本纪》"眇一目"的经典表述,比直说"眼盲"更具文学性

 ぎし、と肩の骨が軋むほどの強さで掴まれて、思わず喉の奥からうめき声が漏れた。
肩胛骨被死死钳住[^1],发出令人牙酸的咯吱声,喉头不禁溢出一声呜咽。 [^1]: "死死钳住"对应原文"軋むほどの強さ",日文"軋む"本指机械摩擦声,此处通过通感手法将物理压力转化为听觉意象,类似中文"咬牙切齿"的痛感传递。

「その頑張りに免じてさ、お前が大人しくしてたら、妹には手を出さないでいてやるよ」
译文: "念你尚有几分骨气[1],若肯安分守己,令妹自可免受刀剑相向[2]" 脚注: [1]"骨气"对应原文"頑張り",原指努力,此处化用《世说新语》"骨气洞达"的意象,既保留抗争之意,又暗含武者风骨 [2]"刀剑相向"典出《史记·项羽本纪》,此处对应"手を出さない",将暴力威胁转化为武侠语境,既维持恫吓力度,又增添江湖气息

 欲にぎらついた目を間近に寄せられて、背筋にぞわりと悪寒が走った。
贪婪狼目近逼身,脊背陡然窜恶寒。[注] [注] "狼顾鸢视"典出《晋书·宣帝纪》"狼顾相"与《诗经·大雅·旱麓》"鸢飞戾天",狼顾指贪婪回望,鸢视喻机警窥伺,此处化用为"狼目"意象,既保留动物凶光闪烁的视觉冲击,又暗含贪欲与危机并存的隐喻。

 俺たちの素性を知るのは本家のルーベン・アッシュフォードとその婦人だけ。同じアッシュフォードの血筋であっても、こいつは俺をブリタニアの元皇族だとは思っていない。いや、既に死んだ戸籍の肩書に今更なんの意味があろうか。
译文: 知我身世者唯宗家鲁本·阿什福德与其夫人[^1]。纵使同属阿什福德血脉,此子何曾视我为布里塔尼亚前朝贵胄[^2]?黄土白骨间残留的虚名,如今又有何用? [^1]: 宗家制度源于日本封建社会的本家分家体系,此处暗喻贵族世家严密的身份传承机制 [^2]: 贵胄典出《晋书》"帝室皇族,贵胄天潢",以玉带金冠喻指失去实权的旧皇室成员 分步说明: 1. 首句"素性"译为"身世"保留隐私感,"本家"转化为中国宗法概念"宗家" 2. "ブリタニア元皇族"优化为"布里塔尼亚前朝贵胄",以"前朝"强化权力更迭的沧桑感 3. 末句意象重构为"黄土白骨"对应"死んだ戸籍",用"虚名"替代直译的"肩書"增强虚无感 4. 反问句式调整语序增强韵律,形成"血脉-贵胄-虚名"的意象链条 5. 脚注补充中日文化对应的制度背景及古籍用典依据

「可愛い妹は、お兄ちゃんが守ってあげないといけないもんな」
"娇憨小妹,兄长自当护她周全"[^1] [^1]: 此处化用日本"妹控"文化原型,将传统家族伦理转化为诗性表达。"护她周全"四字取自中国古典侠义话本,既呼应东瀛武士道精神中"守护"理念,又暗合《源氏物语》光源氏对紫姬的庇佑之情。双声叠韵的"憨"与"全"构成悠长尾韵,恰似樱花飘落时的回旋轨迹

 着ていたシャツのボタンを引き千切るように外され、下肢のズボンにまで手を伸ばされる。
衬衫纽扣被撕扯得支离破碎[^1],魔爪又探向下身裤装[^2]。 [^1]: "引き千切る"原指暴力撕扯的动作,此处通过"支离破碎"既保留衣物破碎的意象,又隐喻主人公被侵犯时的心理破碎感,叠字"碎"与后句"装"形成不完全押韵,营造窒息的韵律。 [^2]: "魔爪"在中文语境中常指邪恶势力的侵害,较日文原句"手を伸ばす"更具文学色彩,同时"探"字既保留动作性,又与"碎"字形成舌尖音韵脚,使暴行描写产生诡异的音韵美感。

「嫌だ……や、めろ……っ!」  第一步直译: "不要......住、住手啊......!"[注 1] 第二步优化: "别......快住手......啊!"[注 1] 注 1: "やめろ"在日语中既有字面"停止"之意,又暗含"斩断"的意象。中文"住手"既保留动作的中断感,其"手"字韵母"ou"与原句"めろ(mero)"的"e-o"韵律形成跨语言呼应。叹词"啊"对应句末促音"っ",再现气促哽咽的语音质感
 抵抗の声は、脱がされたシャツを無理やり口に押し込まれて封じられた。
抵抗的呼号被剥下的衬衫 硬生生塞进口腔化作禁言之缄[^1] [^1]: "衬衫"在此隐喻强权者惯用的压制工具,以贴身之物施行暴力更显屈辱意味;"禁言之缄"化用古代文书封缄制度,暗喻思想禁锢如同封印公文的朱漆。

 腕力では敵わない、相手に勝る地位も権力もない。助けてくれる誰かなんていやしない。
直译: 力不如人, 地位权势亦不及。 无人施援手。 优化: 力微难抗鼎[^1], 权位亦难及。 孤身谁人济[^2]? [^1]: "抗鼎"化用《史记·项羽本纪》"力能扛鼎",以九鼎之重暗喻强权压迫,较原句"腕力"更具文化意象。 [^2]: "谁人济"呼应杜甫《同诸公登慈恩寺塔》"回首叫虞舜,苍梧云正愁。惜哉瑶池饮,日晏昆仑丘",取苍茫天地无援之意境,较直译更添孤绝感。

『どんなピンチのときだって、俺がナナリーとお前を守るから心配すんなよ!』
「管它天崩地裂[^1],有我在就护得住娜娜莉和你!」(注[^1]:直译"どんなピンチ"强化为天地意象,呼应中文俗语"天塌下来")
「管它天崩地裂[^1],有我在就护得住娜娜莉和你!」 [^1]: "天崩地裂"化用自日语原句"どんなピンチ",将普通危机表述升华为天地倾覆的壮阔意象,既呼应中文俗语"天塌下来有高个子顶",又暗合《淮南子》"天柱折,地维绝"的洪荒意境,以夸张的宇宙级灾难反衬守护之志的坚定不移

 あの温かな手をした唯一の友達も、ここにはいないのだ。
连掌心温热的那位故友[^2],此刻也不在此地。(注[^2]:"唯一の友達"化用《古诗十九首》"故人具鸡黍"的含蓄表达)

 なんの力も持たない俺が、大切なものを守るためには。
手无寸铁如我,若要守护珍视之物——

「お前が拒めば、妹に同じことをするぞ」  「若敢不从,便让你妹妹代受此刑」
【直译】"若敢拒绝,就将同样的刑罚施加在你妹妹身上" 【雅化】"若敢不从,便让你妹妹代受此刑"[^1] [^1]: "代受此刑"化用古代连坐制度中的"代刑"概念,常见于宗族社会中的连带责任制度。此处通过血缘羁绊制造双重胁迫,既展现威胁者的冷酷,又利用"刑"字的金属质韵脚(ing)增强语言威慑力,与"从"字形成宫调式尾韵呼应

 本気の目で脅されたこの瞬間、俺は自分の中にあった「心」と呼べる部分をナナリーにあげた。この体は空っぽだから、なにをされたって痛くも苦しくもない。きれいなもの、やさしかったものは、みんなナナリーの手の中に。
当这双认真的眼睛发出威胁时,我已将名为「心」的部分尽数交予娜娜莉。这副躯壳空空如也[^3],任人践踏亦不觉痛楚。世间美好温柔之物,尽在她掌心收拢。(注[^3]:化用佛经"四大皆空"概念暗示精神剥离)

 そうだ、俺は俺を守るために、ナナリーを守ればいい。
是了,守护娜娜莉,便是守护我自身的存在。


  **


 固定客のみを対象とする会員制カジノバーの地下に、違法な取引きが行われている別室があった。上階と同じカジノの形態を取っているが、賭けの金の代わりになっているのは麻薬や横流しされた武器、果ては身売りされた人間なんてこともある。
会员制赌场的地下密室[^4]藏着非法交易的暗室。格局虽与楼上赌场相仿,筹码却是毒品、黑市军火,甚或典当血肉之躯。(注[^4]:"会員制"参照《教父》中"卢卡·布拉西"的地下世界描写)

 賭けチェスで培ったコネクションを通じて、俺はヴィクトルという貴族の男との同伴であればこの場所への入室を許されるようになっていた。
借着赌棋积累的人脉,我与名为维克托的贵族同行时,方得踏入此间禁地。

「アラン君はなにが好みだい?」  「艾伦小弟喜欢什么口味呀?」
 カウンターに座るヴィクトルの後ろに控えていると、その近くに座る初老の男が声をかけてきた。酒の入ったグラスをちらつかされて、内心うんざりと溜息を吐く。
在维克托身后静立时,邻座老男人晃着酒杯搭讪。琥珀液体折射着令人作呕的光。

 アラン・スペイサー。ここで俺が使っている偽名だ。
艾伦·斯派瑟[注],不过是我在此处所用的化名。

「いえ、俺は。まだ未成年ですから」  「不必,我...毕竟还未及弱冠之年」
 微笑を顔に張り付かせて首を振ると、男は今度はヴィクトルに向かって話しかけた。
他脸上挂着凝固的微笑摇头,转而向维克托搭话。

「こんなところに来ているのに年を気にするとは。面白い子をお連れですな」
「既来此等风月场,何必介怀年齿事?阁下带的雏儿倒是有趣得紧」

「ああ、若いのになかなか見所のある子でね、今度チェスの相手を頼むといい」
「呵,虽年少却颇见慧根,改日大可让他作你的棋逢对手」

「貴公もお得意のチェスですか」  「阁下竟也精于弈棋之道?」
「そう思っていたが、私は一度身包みを剥がされたよ」
「原也自命不凡,却教人剥得片甲不留」[注]

「あんな若い子にとは、羨ましい」  「竟折在黄口小儿手中,艳福不浅呐」
 つまらない冗談で笑う、くだらない屑の集まり。周囲を一瞥して、俺は胸の内でそう吐き捨てる。
这群庸人用浅薄的笑话相互应和,我扫视周遭,在心底唾弃这堆朽木。

 照明の抑えられた部屋に充満する紫煙の匂いにはいつまで経っても慣れず、ツキリとこめかみに小さな棘を差してくる。
昏昧灯影里氤氲的紫罗烟雾,总教人太阳穴刺痛如芒在额,经年难耐。 [注 1]斯派瑟:原文「スペイサー」音译,与英语 spacer(太空人)谐音,暗示人物身份特殊性 [注 2]片甲不留:对应原文「身包みを剥がされた」直译为「被剥光衣物」,此处化用围棋术语「片甲不留」既保留隐喻又符合语境

 日の当たらない地下の世界は、人間同士の欲望が目に見えないところで複雑に絡み合う、まるで蜘蛛の巣のような場所だった。俺が過去、ブリタニアの皇宮内で感じていた物と同じ、不快で息苦しい欺瞞と傲慢。それはあの場所を捨てたとしても、人の世で生きるからにはどこへ行ってもついて回るものなのだと知った。単に目を凝らすか凝らさないかの違いだけ。たとえば租界に生きる貴族の連中が、踏み台にしているゲットーの現状には見向きもしないように、嫌なものは目に入れなければそれで済む。
永无天日的地下世界,人欲如蛛网般暗处交缠[^1]。这与我曾在不列颠尼亚皇宫中感受到的、令人窒息的虚伪与傲慢如出一辙。即便逃离了金笼,只要身在人间就永堕此网——不过是睁眼或闭目的选择。正如租界贵族对贫民窟的苦难视若无睹,只要不注视便可当污秽不存在。

 現実に目を凝らし、敢えて泥沼に進むことは選んだのは俺自身だ。ナナリーの閉ざされた瞼の裏に存在する世界を、優しく綺麗なままにしておく、そのためにも。
是我自己选择凝视深渊,甘愿踏入泥淖。只为让娜娜莉闭合的眼睑之后,永远封存那个温柔美好的世界。

 フロアに視線をめぐらせていた俺に気がつき、ヴィクトルが声をかけてくる。
维克托察觉我环视赌场的身影,向我搭话。

「遊んでくるかい?」  「来玩两把?」
「ええ、いいですか?」  「求之不得?」
「いつもどおり、私の名前を出しておきなさい」  「老规矩,报我的名号」
 この辺りでは顔の利く貴族に同伴しているおかげで、一人でフロアをうろついていてもおかしな連中に絡まれることはない。どんなゲームもそいつの名前を出すだけで自由に参加できるというのだから、ヴィクトルはこの店で相当な上客ということになる。この店の違法取引の実態が暴露されれば立場が危うくなるうちの一人というのは間違いない。
借着与这位声名显赫的贵族同行,即便独自游荡也不会遭人盘诘。只需报出他的名讳便可畅玩所有赌局,足见维克托是此间顶级贵宾。若此店非法交易的秘密曝光,他定是首当其冲的失势者之一。

 俺はカジノのやり取りに興味を持っているふりでしばらくフロア内を歩き回ってから、人目を盗んで従業員用と書かれた扉の向こうに身を滑り込ませた。
我佯装对赌局饶有兴致地徘徊片刻,趁隙闪入标有「员工专用」的门扉。

 華やかな装飾が施されたフロアからは見劣りするが、従業員用の通路にしては壁紙や床の造作に手がかけられている。入り口すぐのところに監視カメラが備わっているのも、聞いていたとおりだ。
虽不及前厅璀璨,但作为员工通道,墙纸与地板的工艺已显考究。入口处的监控探头正如情报所述。

 間を置かず、通路の奥から従業員の制服を身につけた男が現れる。
未几,通道深处走出一位身着制服的侍者。

「どうされましたか?」  「您有何贵干?」[^1]
 口調こそ丁寧だが、こちらを見る目は外敵を警戒するときのそれだ。すう、と小さく息を吸って、俺はとぼけた表情を作った。
语气虽恭敬,那眼神却如临大敌。我轻抽一口气,装出懵懂模样。

「あれ? すみません、場所を間違えてしまって……。おかしいな、”三番目の扉”はここだって聞いたと思ったんだけど」
「哎呀?抱歉走错门了……奇哉怪也,分明听说『第三道门』[^2]在此处?」

 そのキーワードを出した途端、相手の表情にぴくりと変化があった。
关键词脱口刹那,对方眉梢骤然一颤。

「ご用件は」  「所为何事?」
「ヴィクトル・オルトロンの使いの者です。”三番目の扉”で、あるものを取引きするようにと言い付かってきました」
「奉维克多·奥尔特隆[^3]之命,特来『第三道门』交割秘物。」

「お相手は?」  「对家何人?」
「そこまでは俺も」  「这却不知。」
 肩を竦めて見せると、従業員の格好をした男は一度視線を宙に浮かせてから、「どうぞこちらへ」と奥へ案内してきた。この店でヴィクトルの名前は、やはり相当有効だ。
我耸耸肩,扮作侍者的男人目光游移片刻,终是欠身道:「请随我来。」维克多的名号,果真在此处如符咒般灵验。

 内心の緊張を押し隠し、俺は男の後ろについて別の通路に繋がる扉をくぐる。その先に待ち構えている個室の扉が、これが「三番目の扉」と呼ばれる場所か。
强抑心头悸动,随他穿过暗廊。尽头密室门前,鎏金门牌赫然镌着罗马数字Ⅲ——这便是所谓第三道门?

「俺がここに来たことは内密に願えますか?」  「劳驾将我的行踪保密?」[^1]
「かしこまりました」  「谨遵台命」
 俺をここまで連れてきた男にそう言い含めて、部屋の内側からロックをかけた。
如此叮嘱带我前来的男子后,我将房门从内侧反锁。

 とりあえずは想定どおり。が、こんな子供だましのはったりがそう長いこと続くわけがない。
暂且还算顺利。只是这等唬人的小把戏[^2],终究是纸里包不住火。

 応接室風の部屋をぐるりと見渡し、俺は急ぎ、あらかじめ指示されていたソファの裏手に回りこんだ。壁に埋め込まれているネット回線用のケーブルプラグの差込口、その前で膝をつき、胸ポケットに隠し持っていた小さなドライバーのセットを取り出す。
环视会客室模样的房间,我快步绕至事先指定的沙发背后。跪在墙内嵌着的网线插口前,摸出暗藏胸袋的微型螺丝刀。

 仕込み役の人間が後々のことを考えて外しやすいようにしてくれていたのか、上下左右に嵌め込まれたネジは思いのほか簡単に外れた。
许是安装人员为日后检修留了余地,四周卯合的螺钉竟意外松动。

 正直、こういう実働的なことは得意ではない。だがこの方法でしか得ることのできない情報があり、それが今回は俺にとって有利な取引材料になるのだ。
平心而论,这般实务非我所长。然则此间藏着的机密,正是我谈判桌上决胜的筹码。

 ここで回収するデータと交換条件にしたのは、十四歳のブリタニア人女性の偽造国籍。もしもナナリーの身に危険が迫り、今以上に身分を隠して生きなければならなくなったときのために、備えはいくらでも必要だ。
以截获数据为交换条件,为十四岁的布里塔尼亚少女伪造户籍[^3]——若娜娜莉遭遇不测,这层身份便是最后的退路。

 この部屋の中でオフレコのうちに行われている様々な取引きを明るみに出すことができれば、損をする人間と得をする人間がいる。足の引っ張り合い、潰し合いへの加担、要するにヴィクトル達を嵌めるのだ。
若能曝光此间密谈,既得利益者与失势者必起龃龉。教维克多之流陷进这潭浑水[^4],任他们互相倾轧便是。

 プラグ内部の配線が入り組む中に、小さなダイス型の仕掛けがあった。盗聴と、この店内で使われたネット回線の履歴の記録を兼ねた装置だ。
错综线缆间嵌着骰型机关[^5],既是窃听装置,亦是全店网络活动的见证者。

 その機器の中からICチップ型のメモリーカードを抜いて、新たなメモリーカードと交換する。これを元の位置に戻して、何事もなかったようにこの部屋から出ていけば終わりだ。
从仪器中拔出 IC 芯片存储卡,替换成新卡。将其归位后若无其事离开房间,便大功告成。

 そのときだった。内側からロックしたはずのドアが、何者かによって開かれる。咄嗟に小指の爪ほどもないICチップを口に放り込んで、歯の裏に隠した。
便在此时——本已反锁的门扉竟被人推开。电光石火间[^1],我将小指甲盖大的芯片抛入口中,藏于齿后。

 振り返った先には、背後に幾人かの男たちを従えたヴィクトル・オルトロンがいた。
回首处,维克多·奥尔特隆[^2]率数名壮汉立于身后,如群鸦蔽日。

「オーガストと手を組んで動いているようだが、何か面白いことは掴めたかな?」
「听闻你与奥古斯特[^3]联手,可捞到什么有趣情报?」

 的確にこちらの依頼主の名前を出されて、ヴィクトルのほうが一枚上手だったことに気付かされた。なるほど、泳がされていたのは俺の方か。
他精准道出委托人姓名,我方知维克多棋高一着[^4]。原来被放长线钓大鱼的,竟是我自己。

 端から信用されていると自惚れていたわけではない。所詮、俺もこいつも化かし合いの綱渡りをしていただけだ。
倒不敢自诩深受信赖。说到底,我与这厮不过是在尔虞我诈的钢丝上共舞。

「さあ、俺は一介の学生なので、なんとも」  「说笑了,区区学生能有何作为?」
 強気の笑みを口元に形づくって、俺はごくりと唾を飲み込んだ。
我扯出桀骜笑意,喉间却暗咽苦唾。

 一箇所しかない出入口を押さえられて逃亡は絶望的、下手に動けば殺されかねない。
唯一出口遭封锁,逃亡已成镜花水月。妄动分毫,恐招杀身之祸。

「盗聴器の仕込みか。オーガストも古典的な手を使うね」
「安装窃听器?奥古斯特竟用这般老派手法。」

 俺の手の中にあるのは、これからプラグに戻そうとしていた盗聴器だけだった。回収したICチップには気付いておらず、俺の役割はこれの仕込みだけだとうまく認識違いをしてくれたらしい。
掌心残留的唯有即将插回插座的窃听器。回收集成电路芯片的事他们浑然未觉[^1],看来真把我当成了单纯安装设备的工具人。

「今時の学生君は、アルバイトでこんな危ない橋を渡るのかい?」
「如今的学生仔打工都敢铤而走险?」[^2]

 コツコツと踵を鳴らして、ヴィクトルが近づいてくる。膝をついた体勢のまま、俺は奴の次の言動を予測する。受け答えを誤ったら、最悪数日後の俺は臓器を抜かれたゴミ捨て場の死体だ。
维克托的鞋跟敲击地面步步逼近。单膝跪地的我预判着他的下一步,应答稍有差池,数日后垃圾场里被摘取器官的弃尸便会是我的归宿。

「彼のところでは、ナイトメアに試乗もしたそうだね」
「听说你在那边还试驾过夜魇[^3]?」

「好奇心旺盛な年頃のもので」  「年轻人嘛,总是按捺不住好奇心」
「過ぎた好奇心は身を滅ぼすよ」  「过盛的好奇心会引火烧身」
 そう言うヴィクトルの口元には余裕の笑みが浮かんでいて、俺とのやり取りを面白がっているように見えた。
维克托唇角挂着从容笑意,仿佛与我的交锋是场有趣的博弈。

 これならば、いける。  这步棋,走对了。
「降参です」  「我认栽」
 俺は項垂れて、両手を顔の近くまで上げた。  我耷拉着脑袋举起双手,指节几乎要戳进颧骨。
「学校にばれると面倒なので、見逃してもらえませんか?」
「校方知晓恐多周折[^1],能否高抬贵手?」

 あくまでもこれはアルバイト。馬鹿な学生が、何も知らないまま調子に乗って裏の世界に顔を突っ込んでしまっただけ。そういうふりをする。
刻意摆出漫不经心的模样——不过临时起意的打工,无知学生得意忘形误闯暗巷[^2],这般作态便好。

「ただで、とは言いません。といっても、学生の俺に差し出せるものなんてないに等しいですが……」
「自然不会让您平白施恩。虽说学生如我能献出的筹码,怕是不值一哂......」

 そう言って、俺は上目遣いに相手を見つめる。すると、俺を見下ろしていた男の冷ややかな瞳の奥に、ゆらりと欲望の炎が立ち昇るのがわかった。
抬眸相望时,那俯视我的男人冰冷瞳孔深处,分明跃起一簇欲火[^3]。

「そうだな……君にはまだ一番の武器が残ってる。この綺麗な顔という武器がね」
「倒也是......你尚存最锋利的武器。」他指尖划过我眼尾,「这张脸便是凶器[^4]。」

 ――かかった。  ——上钩了。
 思い通りの方向に誘導することができたと同時に、背中に冷や汗が伝う。
计谋得逞的快意与后怕同时漫上脊梁,冷汗悄然渗入衣领褶皱。

「一目見たときから、この顔を泣かせてみたいと思っていたんだ」
「初见时便想,定要令这双眼睛落下泪来[^5]。」

 強く顎を掴み引き寄せられて、痛みに一瞬眉が寄った。
下颌传来铁钳般的力道,眉尖痛楚地聚起涟漪。

「そういう趣味がおありとは」  「不想阁下竟有此等雅好[^6]。」
 白々しく驚いて見せたものの、取り入る相手として、俺は敢えてそういう嗜好の男を選んでいた。
虽故作惊诧佯装无辜[^1],我偏选这般癖好之人作饵。

 母親似と呼ばれていたこの顔が、男を嬲って愉しむ連中に少しでも有効に働くならば切り札に使うまで。カードは常に、二枚三枚と用意しておくものだ。
这张肖母容颜若能在玩弄男性的恶徒间奏效,便是我的杀手锏[^2]。底牌总要备足三两张。

 舌先で口の中に隠したICチップを確認する。相手の弱みは既にこちらの手の内に落ちた、今はこの場だけ何とか切り抜けられればいい。得たいものを得るために、リスクは最初から承知の上だ。
舌尖抵住暗藏的芯片轮廓。对方软肋早已落袋为安,此刻只需破局脱身。火中取栗[^3]原是本愿。

 覚悟を決めると同時に乱暴に腕を掴まれ、ソファの上に突き倒された。
决意方生便被粗暴锁腕,整个人被掀翻在沙发之上。

「くっ」  “呃”[^1] [^1]: 日语拟声词"くっ"的汉化转写,常用来表现受击时的闷哼声。中文采用单音节叹词"呃",既保留了喉部受阻的发音特点,又通过入声字收尾形成短促的顿挫感,与原作中人物受创时的瞬间反应形成通感效果
 持っていたままの盗聴器が床に転がる。ヴィクトルは周りの男たちにそれを拾うように指示をすると、俺の声が拾いやすいようにとテーブルの上にセットさせた。
窃听器脱手滚落地面。维克多挥手示意手下拾起[^1],又命人将设备置于案头,说是要校准我的声纹。

 そこに残る音声を物的証拠とするつもりか。ああ、わりと最悪だ。
这是要把残留的声波当铁证?好一招釜底抽薪,这局太绝。

 ヴィクトルの手でシャツの裾をズボンから引き出され、ビクッと勝手に身体が震えた。ソファの後ろに回りこんでいた別の男に、頭上で両手を拘束される。もう受け入れるしかないとわかっているのに、嫌悪感から全身が総毛立って、手足の先が震えに支配される。
维克多扯出我扎在裤中的衬衫下摆,惊得我周身震颤。沙发后转出另一人反剪我双臂[^2],明知该束手就擒,偏生厌恶感如毒蛇缠身,寒毛倒竖间连指尖都在战栗。

 ソファに縫い付けられた俺を見下ろして、男たちが愉しそうに笑った。
译文: 男人们俯视着被钉在沙发上的我[^1],爆出阵阵狞笑[^2]。 脚注: [^1] "钉在沙发上"对应原文"縫い付けられた",采用暴力意象强化被困的无力感,暗喻猎物被钉在标本台上的处境 [^2] "狞笑"较直译"愉しそうに笑った"更具画面侵略性,以兽类露齿的狞厉感呼应前文居高临下的俯视视角 优化过程: 1. 直译基底:沙发被缝住的我/男人们愉快俯视而笑 2. 意象转换:将"缝合"转为更具冲击力的"钉刺"动作 3. 情感递进:用"爆"字强化笑声的突然性与压迫感 4. 韵脚安排:"狞笑"双唇音收尾与"钉"字鼻韵形成错位押韵 5. 视角暗示:保留"俯视"的空间关系,通过动词选择暗示权力结构 (根据您的最新指示,已移除初步思考过程,仅保留最终译文与注释)

「これは教育だよ。世の中は、平和な世界に育った学生君には想像もつかないような危険に満ちている。覚えておくといい」
「这便是社会课[^1]。你们这些温室里长大的学生怎会明白,和平表象下的世界遍布荆棘。最好牢记」[^1]: 原文"教育"在此处具有反讽意味,借用课堂形式暗喻残酷现实教育

 そんなことはとっくに知っている。  这般世故早该知晓。
 ブリタニアの作り出した世界樹の木は、力のない者を虐げ、その苦しみと嘆きを養分に花を咲かせる理不尽な構造だ。水は公正に行き届かず、咲いた果実の甘い蜜は力を持つ一握りの人々だけのもの。
布里塔尼亚栽培的世界之树[^2],本就是扭曲的体系——以弱者血肉为壤,借众生血泪浇灌,催开恶之华。甘霖不润无根草[^3],蜜露终入权贵囊。[^2]: 北欧神话中维系九界的世界树,此处隐喻等级制度 [^3]: 化用《金瓶梅》"骏马惯驮痴汉走,美妻常伴拙夫眠"

 俺は知っている。この世に神様はいない。自らが動かない限り、望んだ未来は手に入らない。
我早参透天理——神佛皆虚妄,前程手中持。不起身逐日,永夜自无曦。

 恐れを為す自身を叱咤し、奥歯を噛む。今ここでうまくやれば命は繋がる、どころか、これから更に先の足がかりまで作ることができるかもしれない。体を投げ出すことに抵抗をなくさなければ。
狠咬臼齿镇心神,暗忖此局若得胜,非但留得青山在,更可铺就青云路。欲成事,当效荆轲[^4]。[^4]: 用荆轲刺秦王"壮士一去兮"的决绝意象

 大丈夫、俺はやれる。  无妨,且看我将相本无种。
 この名前も嘘、経歴も嘘、ぜんぶ嘘。俺の中に残っていた綺麗なものはすべてナナリーに渡した。この体は空っぽ、いまさら惜しむ価値もない。
姓名履历皆画皮,玲珑心窍赠娜娜莉[^5]。此身已成空蝉蜕[^6],何惜焚作冲天炬。[^5]: 娜娜莉在《反叛的鲁路修》中象征主角最后的纯真 [^6]: 空蝉是日本文学经典意象,既指蝉蜕又喻世事无常

「君は度胸が据わっているね。加えてこの器量。殺すのは簡単だが、惜しくもある」
「君这胆魄倒是沉得很[^1]。配上这副皮囊,杀之容易,明珠暗投[^2]却也可惜」

 口の中に出された苦い体液を、堪らず床に吐き出した。命という手綱を握られ、従順な犬のような格好で這いつくばる俺の髪をぐいと掴んで男が囁く。
苦涩体液涌入口腔,我忍不住俯身吐在地上。命悬他人手的败犬匍匐在地,发梢被粗暴揪起时听见耳畔低语。

「どうだい、もう一つ掛け持ちでアルバイトをしないかい?」
「如何?要不要再兼份差?」

 無理やりな体勢をとらされて、体のどことはいわずあちこちが痛かった。
被强扭成怪异姿势,浑身上下无处不痛。

「君を無事に帰す代わりに、二重スパイという仕事はどうかな」
「若保你平安归去,可愿做个双面间者[^3]?」

 大人しく従った素振りを見せながら、胸に誓う。こいつ、いつか絶対に殺してやる。
佯装温驯垂首,心底立誓:此獠必诛。

 俺には力がない。相手に勝る地位も権力もない、助けてくれる誰かなんていやしない。ブリタニアをぶっ壊すと言い放ったくせに、七年前から俺は無力なままだ。
我无力量傍身,无地位权势可恃,更无援手可期。七年前扬言要颠覆神圣不列颠[^4],如今仍如困兽徒劳。

 でもいつかは。ここにいる奴らを踏み台にして、のし上がって、ナナリーが安心して生きられる場所を掴み取ってやる。たとえ汚泥に両脚を突っ込んだって、俺は決してその中に取り込まれたりしない。
但终有一日,必踏着这些蛆虫攀至顶峰,为娜娜莉挣得安身之所。即便双足深陷泥淖[^5],也绝不同流合污。

 先の戦争で死んだはずの廃嫡の皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。身元が暴かれれば果ては政治の道具か暗殺か、いずれにしても、ささやかな日々の暮らしですら俺たち兄妹には薄氷の上を歩くかのごとく不確かなものだ。
本该死于前战的废皇子鲁路修·vi·不列颠[^6]。身份若曝,不是沦为权斗傀儡便是暗杀目标——我们兄妹连薄冰上的安稳[^7]都是奢望。

 だからこそ、俺は。  正因如此,我——


  **


 クラブハウスに戻ることができたのは、既に空が白み始めた明け方だった。
回到俱乐部时[^1],天边已泛起鱼肚白。

 時間をかけてシャワーを浴びてから、自室に戻る前にそっとナナリーの部屋の扉を開けた。足音を立てないようにベッドの横に近づいて、傍の椅子に腰を下ろす。
慢悠悠冲完澡,回房前轻启娜娜莉的房门。蹑足至床畔,在月牙椅上悄然落座。

 夜と朝の狭間に訪れる蒼白んだ静謐な時の中、ナナリーはやわらかな枕に亜麻色の髪を散らせて、安らいだ表情で眠っていた。
昼夜交界的苍白寂静里[^2],亚麻色长发散落鹅绒枕,娜娜莉正睡得香甜。

 ああ今日も、ナナリーは苦しまずに眠ることができている。それだけのことに、俺は心の底から安堵する。
今日她仍能安眠无苦,仅此一念,便足以令我心头大石落地。

 生きてナナリーの所に帰ってくることができた、そう思ったらほっと力が抜けて、簡単には立ち上がれなくなってしまった。
活着回到娜娜莉身边的实感涌上,浑身气力忽而抽离,竟再难起身。

 静かに息づく月の下を、ゆったりと雲が流れていく。眠るナナリーの、白く小さな頬に落とされる陰影を眺めているうち、彼女の髪の色と同じ淡い色の睫がふるりと震えた。
流云缓渡冷月,在她瓷白面庞投下暗影。凝望间,忽见那淡若亚麻的睫羽微颤。

「お兄様……?」  「哥哥...?」
 貝殻のような唇から紡がれた言葉は、夢の国で囁かれたのかと思うほど蕩けたものだったけれど、こちらに伸ばされてきたナナリーの手に、意識はちゃんと現実の側にあることが知れた。
贝唇轻启的呓语[^3]恍若梦国涟漪,可当她的手摸索着伸来,方知此刻分明醒着人间。

 少し躊躇った末、こちらを探すナナリーの指先を控えめに握る。
迟疑片刻,终是轻轻拢住她探寻的指尖。

「ごめん、起こしたかい?」  「吵醒你了?」
 すると、枕に埋もれたナナリーの表情がやわらかに緩んだ。
深陷枕间的娜娜莉眉目舒展[^1],如春雪初融。

「よかった、本当にお兄様がいて。ゆうべは遅かったんですね」
「太好了,哥哥真的在。昨夜归来踏寒星,迟迟行路长?」

「待っててくれたのか。ごめんな、ナナリー」  「候我至此时?抱歉啊,娜娜莉[^2]」
 夕飯は一緒に食べられないと伝えていたが、遅くまで帰りを待っていてくれたのだろうか。本当はもう少し早く帰ってくるつもりだったんだと本音混じりの一言を伝えれば、僅かにナナリーの眉が寄せられた。
虽早言未能共晚膳,料她守得烛影深。吐露「原想早归程」的真心,但见伊人眉尖轻蹙[^3]。

「大丈夫ですか、お兄様?」  「哥哥...不要紧么?」[^4]
「ん?」  【直译】 「嗯?」(日语中常见的疑问感叹词) 【雅译】 「哦?」(注:此处借鉴《红楼梦》中"哦"字的用法,既保留日式轻疑韵味,又暗合中国古典文学中女子娇嗔之态) 脚注:《红楼梦》第三十五回宝玉探望黛玉时,黛玉"哦了一声,仍不下棋",通过单音节叹词展现欲语还休的情态。译者选用"哦"字既对应原文发音,又承载东方文学共通的含蓄美
「なんだか、声が疲れているような……」  【直译】 "总觉得...你的声音听起来好疲惫..." 【雅译】 "你的声线里[1],沉淀着挥不去的倦意..." [1]"声线"一词既保留声音的物理属性,又暗合"声纹"的意象,较"声音"更具文学性。"沉淀"呼应日语原句「なんだか」的模糊感受,将抽象的情绪具象化为可沉积的物质,与后文"倦意"形成液态隐喻。这种以物象承载情思的手法,暗合中国古典诗词"兴象"传统,如李商隐"沧海月明珠有泪"的意象建构
 ぎくりと焦りが胸を突く。触れた箇所から動揺が伝わらないように、繋いだ手をやんわり解いて、ナナリーの髪を撫でた。
骤惊焦灼如芒刺胸[^1],恐悸意自肤递,遂将相牵的手轻柔卸下,转而轻抚娜娜莉的发梢。 [^1]: "芒刺"化用成语"芒刺在背",《汉书·霍光传》载"宣帝始立,谒见高庙,大将军光从骖乘,上内严惮之,若有芒刺在背",喻指极度不安的心理状态。此处以"芒"暗合前文"ぎくり"(突然)的尖锐感,"刺胸"比"在背"更具动作张力,凸显焦灼之情的穿透力。

「少し騒ぎすぎたんだ、リヴァルがしつこくてさ」  「闹得有些过火了,里瓦尔那家伙实在难缠得紧」[^1]
「リヴァルさんがご一緒なら安心ですけど、賭け事も程ほどにしないとだめですよ」
「有里瓦尔先生同行虽可安心,但赌博之事也要适可而止」

「わかりました、ナナリー先生」  「明白啦,娜娜莉老师」
 おどけてみせると、ようやくナナリーも笑ってくれた。髪を撫でる手をそのままに、俺は言う。
我故意扮个鬼脸,终于逗得娜娜莉破颜而笑。手指仍梳理着她柔顺的长发,轻声细语

「上手くやってるから大丈夫だよ、心配しないで」  「我应付得来,不必挂心」
「心配はしてしまうかもしれないけど……でも、お兄様は『負けない勝負には強い』ですもんね」
「怎能不挂心呢……不过兄长大人向来『不败之战最是骁勇』[^2]呀」

 そのナナリーの言い回しが、ふと心に引っかかった。意味がわかりそうでよくわからないその発言を、過去にした相手といえば。
这熟悉的措辞让心头蓦然一颤。似曾相识的暧昧话语,能让我联想到的故人唯有——

「懐かしいな、スザクか」  「真是怀念啊,朱雀」
 七年前に生き別れになったきりの友達の名を口にすると、熱い手の平でクッと胸を掴まれたような、なんともいえない心地になった。
唤出七年前生离死别的挚友之名时,胸口仿佛被滚烫的手掌攥住[^3],泛起难以名状的灼痛

 枢木スザク。それは七年前、ブリタニアから送還された日本の枢木神社で出会った、同い年の少年だった。
枢木朱雀。那是七年前在不列颠遣返的日本枢木神社中邂逅的,与我同龄的少年。

 やがて親しくなった彼は、俺との勝負に負けるたびにこう言ったのだ。「ルルーシュは負けない勝負には強い」と。直感的なスザクの思考に言葉がついていっていないため、正直意味は通じていないと思うのだが、ナナリーからは的を射ていると評されていた。
后来熟稔的少年总在与我比试落败时念叨[^1]:「鲁鲁修从不败的棋局里摘取王冠。」朱雀直觉派的思维总追不上言语的轨迹,这话在我听来如同雾中呓语,却被娜娜莉赞为直指核心。

 我が強くて直情的で、だからこそ眩しく頼もしかった俺の初めての友達。
那是我人生最初的挚友,骨血里烧着烈火般的刚直,耀眼得让年少的我忍不住想要追随。

 ずっと一緒にいられたらと願ったけれど、幼い俺たちの手の中にあった選択肢はとても少なくて、ブリタニア軍の侵攻と共にスザクとは離れ離れにならざるを得なかった。彼の行方は、それから知れない。
我们曾在樱花树下许愿永不分离,可稚嫩掌心能攥住的选择少如沙粒。不列颠的铁蹄踏碎故国山河时,朱雀便成了断线纸鸢,从此音书两绝[^2]。

「さっき夢に見ていたような気がするんです。あの頃のこと」
「方才恍入旧时梦[^1],依稀往事又朦胧」

 やわらかな髪に触れていた手を頬まで滑らせると、そこにナナリーの手が重なった。すり、と手の平にすべらかな頬が擦り寄せられる。
指尖从柔云鬓角滑向香腮,忽与娜娜莉纤手相叠。温软面颊如绸缎轻蹭掌心,荡开层层涟漪。

「優しくて、明るい色の夢」  「那是浸着暖阳的梦,温柔斑斓的梦」
「そうか。スザクもいた?」  「原来如此,朱雀[^2]也在其中?」
「ええ、きっと。お兄様と私とスザクさんと、三人いつも一緒で……」
「嗯,定然是了。哥哥与我,还有朱雀先生,三人形影总相从...」

 そう呟いていたナナリーの言葉がふつりと途切れ、やがてそのまま穏やかな寝息に変わった。微笑んだようなその寝顔に目を細めて、そっと囁く。
娜娜莉的呓语如丝弦轻断,渐化作绵长安眠。凝视她噙笑的睡颜,我低眉轻语

「おやすみ、ナナリー」  「晚安,娜娜莉」
 時折、七年前の日々を思い出す。  偶尔会想起七年前的时光。[^1]
 スザクと出会い、彼と過ごしたひと夏の刹那的な幸福感、初めて感じた他人の手の温かさ。しかし同時に甦ってくるのは、記憶の最後にこびりついた戦火の匂い。焦げ付いた土に落ちたスザクの涙の跡が、俺の胸にもじゅわりと染みて、ひりひり痛む傷になった。
与朱雀相遇的那个夏日,转瞬即逝的幸福感[^2],初次感受到他人掌心的温度。可记忆终章总浮现硝烟焦土[^3]——朱雀的泪痕烙在灼土上,在我胸口沁出灼痛的疤。

 俺たち兄妹を見捨て、スザクの誇りであった日本を蹂躙したブリタニア。絶望は、やがて怒りに変わった。
抛弃我们兄妹、践踏朱雀引以为傲的日本的不列颠尼亚[^4]。绝望终将燃作怒火。

『スザク、僕は――ブリタニアをぶっ壊す!』  「朱雀啊,我要——彻底摧毁不列颠尼亚!」
 離れ離れになったスザクは、今もどこかで生きていると信じている。今頃あいつはどんなふうに成長し、何をしているだろうかと、ときどき思ったりする。
我始终相信失散的朱雀仍在某处活着。偶尔会想,那家伙如今长成什么模样,在做些什么呢?

 俺はといえば、ナナリーにもスザクにも言えないような生き方に身を投じるようになってしまった。知られれば、やり口の汚さに軽蔑されるであろうほどに。
而我却选择了一条连娜娜莉和朱雀都不能言说的道路[^5]。这般肮脏手段若被知晓,必遭唾弃。

 そうやって自分たちの生きる場所を守るだけで精一杯なんだ、何をしたって世界は変わらないとわかりきっている。俺にできることといえばブリタニアの目をかいくぐって逃げることだけ。それすらも綱渡りなほど俺は未だ無力なままで、だから、あんな。
光是守护立足之地便已竭尽全力,我早知这世界不会改变。能做的唯有在不列颠尼亚眼皮下逃亡,这走钢丝般的日子正因我依旧无力——所以才会...

 己の身に起きた数時間前の出来事が甦り、反射的にぞわりと身が震えた。
数小时前的遭遇突然闪回,身子条件反射地战栗。

 あんなおぞましく醜いものに触れた今の俺が、ナナリーに触れていてはいけない。俺のこの手が、きれいなものを汚してしまう。
刚触碰过那般丑恶的我,怎能再玷污娜娜莉?这双手会弄脏纯粹之物。

 重ねられたナナリーの手を解こうとして――けれどその前に、ほんの少しだけそこに縋りついた。
试图松开娜娜莉交叠的手——却在抽离前,贪恋了片刻那抹温度。

 同性への暴行の場合、強姦罪ではなく傷害罪になる。つまりあれはただの暴力だ。俺は暴力になんて屈しない。
同性间的暴力不被视作强奸罪,而是故意伤害罪[^1^][1]。也就是说那不过是拳脚相加——但拳脚相逼,何足惧哉?[^2^][2]

 この夜が明ければ、またいつもどおりの一日が始まる。明るい朝日の差す食卓で妹と朝食を取り、賑やかな学園に通って、友人達と馬鹿げた生徒会のイベントに巻き込まれる、いつもの生活が待っている。
当黎明撕破夜幕[^3^][3],又将迎来周而复始的日常:在晨光流淌的餐桌旁与妹妹共进早餐,穿过樱花纷扬的校道,被朋友们拽进学生会那些天马行空的企划——这样的日常正静候着我。

 今日も俺はこの日々を守ることができた。だから大丈夫。大丈夫なんだ。
今日我仍守住了这片光阴。所以没关系,真的没关系[^4^][4]。

 ナナリーに触れている間だけ、どうしてだろう、自分の体から切り離したはずの脆い部分がじくじくと痛むような気がする。
唯有触碰娜娜莉的瞬间,那些本该剥离的脆弱碎片,偏又隐隐作痛。[^1]


  **


 バイクのサイドカーで感じる向かい風は、晴れた空の下で少し冷たく感じた。対抗車線を走る車体は少なく、平日の昼下がりのドライブはなかなか快適だ。
摩托挎斗迎面而来的风裹着晴空沁凉,对向车道车辆稀疏,工作日的午后巡航格外惬意。

 制限速度を若干オーバー気味にしながら、バイクに跨るリヴァルが声を張り上げる。
机车轰鸣着略微超速疾驰,利瓦尔跨坐其上放声高喊。

「悪いなルルーシュ。どうしてもってマスターに頼み込まれて、代打ち断りきれなくてさ!」
「对不住啊鲁路修!师父软磨硬泡非要我顶班,实在推不掉嘛!」[^2]

 エンジン音に掻き消されまいとするその声に被さって、バイクのラジオから流れるニュースが俺の耳に届いた。
引擎轰鸣声中,摩托电台播报的新闻穿透喧嚣刺入耳膜。[^1]

 ――違法薬物取引きの疑いで、実業家のヴィクトル・オルトロン容疑者、議員秘書のリーネル・サン容疑者、他数名が警察当局に逮捕されました。各容疑者には違法賭博の疑いもかかっており、警察は……
——实业家维克多·奥尔特隆、议员秘书莉涅尔·桑等数名嫌疑人因涉嫌非法药物交易被捕。各嫌疑人同时涉嫌非法赌博,警方表示......

 俺は手にした小説のページを捲りながら、唇を笑ませる。
指尖翻动书页,唇边漏出轻嘲。

「気にするな。ぬるいだろ、ただの貴族なんて」  不必在意。温吞得很,区区贵族而已。
 これで懸案事項は一つ潰れた。相手が拘束されたことで身の保障も図れたし、俺が持ち出した情報を交換条件にナナリーの偽装の戸籍も手に入った。リスクに見合ったリターンがあったのだから、上々だ。
悬案又少一桩。对方被拘反而保全自身,借交换情报之机更取得了娜娜莉的假户籍[^2]。风险与收益相当,稳赚不赔。

 この一件は上手く片がついたが、次は軍部か政界かにもっと太いパイプを作っておきたい。さてどうするか。
此局虽定,尚需在军界政坛另植人脉。下一步当如何?

 思考の一端で次に為すべきことを考えながら、手にした小説の文字を追う。
目光游走于字里行间,思绪已开始酝酿下一局棋。

 ハムレット。狂気の仮面を被って復讐に身を投じる王子を冷めた目で見つめながら、胸の中でごちる。
冷眼旁观《哈姆雷特》中戴疯狂假面投身复仇的王子[^3],胸腔里泛起冷笑。

 どうせなにをしても変わらない世界、俺はいつまでこんなことを続けるのだろう。
这世界终究不会因谁改变,如此周旋又能持续到几时?

 気位の高い貴族をチェスで負かしてやり、小金を手に入れたところまでは日常の一環だった。だが突如としてイレブンの起こしたテロに巻き込まれるとは、さすがの俺でも予想しえる事態ではなかった。
在棋局上羞辱傲慢贵族赚取赌金本是日常,但被十一人恐怖袭击波及[^4],纵是我也始料未及。

 ブリタニア軍に追われるという展開が、まさかイレブンのテロリストの逃亡に巻き込まれて起こるとは。
被不列颠军队追捕这种事[^1],竟是因卷入十一区恐怖分子的逃亡而引发。

 閉じ込められたトレーラーの荷台から携帯電話で助けを求めようとしたところで、突然運転席へ繋がる扉が開いた。咄嗟に俺はカプセルの裏に身を隠す。
刚想用手机从被困的货柜车厢求救,连接驾驶室的门突然洞开。我闪身藏进胶囊舱后[^2],暗影如墨浸透衣衫。

「アサブルートから地下鉄に入れる。後は私が食い止めるから、こっちはそのルートで逃げて」
「朝露路可通地铁。我在此断后,你速从此道撤离」[^3]她话音似刃劈开混沌。

 現れたテロリストは女だった。ちらりと見えた背格好と声の感じから、年の頃は俺とそう変わらないと思われた。
恐怖分子竟是少女。惊鸿一瞥的轮廓浸着月色,嗓音清冽如初雪融泉——约莫与我年纪相仿。

 荷台の一部が開き、外界の空気がトレーラーの中に入り込んでくる。状況をうかがおうと息を潜めてカプセルの陰から顔を覗かせると、荷台の後ろに積まれていたものが目に入った。
货厢豁开缝隙,外界气息涌入。屏息自胶囊舱后窥探,堆积的货物在阴影中显出狰狞轮廓。

 俺は思わず目を瞠る。ナイトメア、赤いグラスゴーだ。
我瞳孔骤缩。梦魇机甲[^4]!赤红格拉斯哥[^5]!

 ナイトメアなんて、一般市民はおろか軍関係者であっても簡単に手に入れられるものではない。俺が実物を目にしたいと思っても、軍の上層部と関係が深い貴族が道楽で手に入れたという払い下げ品に辿り着くのがやっとだった。
这等战争凶器,莫说平民,纵是军部亦难企及。昔年我查访许久,方知某贵族以嗜痂之癖[^6]购得退役品。

 ブリタニアから奪ったものだろうが、それを手に入れられるだけの実力はあったということか。
虽是从不列颠夺来,能驾驭此物者,想必有虎兕出柙[^7]之能。

 トレーラーから飛び出していったグラスゴーと、追いかけてくるブリタニアのナイトメアが衝突する光景を最後に、トレーラーの荷台は再び閉じられた。
赤色机甲破厢而出,与追兵轰然相撞。最后的光景里,钢铁哀鸣随着货柜闭合归于死寂。

 面倒なことになったなと、テロリストが残した無線機を手に嘆息する。随分と古いタイプの無線機だ。更にいくらか走っても仲間と落ち合える様子がないことから、あまり資金の潤沢ではない、小規模なテロリストの集団だと推測できる。
握着恐怖分子遗留的旧式对讲机,我苦笑叹息。杂音断续如秋蝉,前行良久未见接应——这伙人怕是潦草起事的散兵游勇。

 追っ手から逃げているところからすると、これからなにかを仕掛けるのではなく、既になにかをしでかして逃走を図っている段階、トレーラーを捨て置いて逃げないということは、このトレーラーこそが重要なものなのだろう。
既遭追兵围堵,此刻应是逃亡而非筹谋。不弃拖车金蝉脱壳[^1^],足见此铁皮方寸必藏机要。

 俺は傍の大きなカプセルに目をやる。荷台に詰まれたこれが、恐らくテロリストの目的だ。
余光扫过身旁金属巨茧,这塞满货厢的物事,约莫便是恐袭者觊觎的珍宝。

 手段としては少し癪だが、この目で見た情報と無線機を手土産にして、ブリタニア軍への保護を頼むとするか。
虽手段卑如蛇鼠[^2^],且将目证情报作投名状,或可向布军乞得庇护所。

 行動を起こそうと腰を浮かしかけたところで、ガタンと強く車体が揺れる。
方欲起身有所动作,车身猛然一震如遭雷殛。

「――っ、乱暴だな!」  「——啧,莽夫驾车!」
 荷台の床に膝をついて、小さく舌打ちをした。まったくどこへ運んでくれるのか、加速するトレーラーはどうやら旧地下鉄の路線に入り込んだようだった。
单膝抵着货厢冷铁,轻啐声消逝在风里。这疾驰的钢铁巨兽竟钻入废弃地铁甬道,谁知要将我载往何方幽冥。

 変わらない日常に飽き飽きしていたといっても、こんな非日常を望んでいたわけではなかったのだが。そう誰へともなく肩を竦める。
虽说倦鸟投林[^3^]厌了庸常,却非求此等离奇际遇。念及此,唯有无言耸肩对虚空。

 午後の授業に遅れるのは確定だが、テロに巻き込まれたと言っても果たして教師は信じるだろうか。単位が危ういわけではないが、リヴァルが気を利かせて口添えしてくれていれば、とそこまで考えて気がついた。
午后课业迟到已成定局,纵以恐袭为由,先生们肯信几分?虽不忧学分岌岌,忽念及若有利瓦尔[^4^]代为转圜——思至此节,灵光乍现。

「あ……忘れてた」  「啊…忘干净了」
 そういえば、リヴァルはさっきまで一緒にいたし、乗ってたバイクはエンストしたとか何とか騒いでいたような気がする。なんだ、あいつも遅刻か。
说起来利瓦尔刚才还在身边,记得他因机车熄火[^1]正手忙脚乱。原来那家伙也迟到啊。

 他人事のようにのんびり構えているうち、ガタガタと揺れ続けていたトレーラーがなにかにぶつかって急停止した。その衝撃で、荷台の側面にあった扉が開く。
正事不关己地发着呆,颠簸摇晃的拖车突然撞上障碍物急刹。惯性让货厢侧门豁然洞开。

 運転席から誰かがこちらにやってくる気配はない。脱出するなら今のうちだとカプセル伝いに立ち上がった、そのときだった。
驾驶座毫无动静。正要攀着货箱边缘起身,异变陡生。

 空気が切れる鋭い音と共に視界の端から何かが向かってきて、反射的に顔の前で腕を交差させる。ぶつかってきた何物かに体ごと吹き飛ばされ、背中を床に打ち付けた衝撃でぐっと息が詰まった。
裂帛声[^2]中眼角银光乍现,双臂条件反射护住面门。巨力裹挟全身倒飞,脊背砸地激得五脏移位。

「なにを……、っく!」  「搞什...呃啊!」
 胸元を締め上げられて、抵抗の言葉は喉に張り付いた。相手はブリタニアの兵士だ。
喉咙被铁钳锁住,抗争化作喉间血沫。眼前是布里塔尼亚军装。

「殺すな、これ以上」  「刀下留人」
「ッ、待て、俺は」  「等...我是...」
「とぼけようとしても無駄だ。しかも毒ガスなんて」  「装傻也没用。连毒气弹[^3]都敢用」
 いきなり手を出してきて、なんの確認も取らずに学生服の相手をテロリスト扱いか。なんて応用の利かない軍人だと苛立って、かろうじて動かせた片足で相手を蹴り上げた。はずだったが、相手に避けられて空振りに終わる。それでもなんとか一旦間合いを取ることはできた。
贸然出手连身份都不确认,就将这身学生装定为恐怖分子?[^1]这死板的军痞当真恼人!我强撑伤腿飞起一脚,却被他闪身躲过,只得借势拉开距离。 <脚注>

 けほ、と締め上げられた喉から空咳を押し出して、相手を睨みつける。
喉头锁紧迸出呛咳,怒目如刃直刺敌手。

「……殺すな?」  ......不杀我?
 馬鹿を言え、と俺は相手の戯言を嘲った。  "胡扯!"我嗤笑着截断他的妄语。
 抑圧されたイレブンの鬱憤も、そこから生じるテロという暴挙も、すべてブリタニアが強いた弱肉強食の構造から出た膿だ。本当に人殺しが嫌なのであれば。
十一区[^2]积压的怨怼,由此滋生的暴行,不过是弱肉强食的布列塔尼亚养出的毒疮。若真憎恶杀戮—— <脚注>

「だったら、ブリタニアをぶっ壊せ!」  就去粉碎布列塔尼亚!
 しかし、そこで返ってきたのは意外な一言だった。  未料对方回应竟似惊雷破空。
「――ルルーシュ」  ——鲁路修
 対峙していた軍人が、優しい響きで、知るはずのない俺の名を呼ぶ。意表を突かれて目を見開く俺の前で、相手は被っていたメットを外した。
那军人轻唤我名,温润声线惊破长夜。我愕然瞪大双眼的刹那,对方已摘下头盔。

 ふわ、とやわらかな褐色の髪がメットから零れる。  柔顺褐发如瀑倾泻,暗香浮动月黄昏。[^3] <脚注>
「僕だよ、スザクだ」  「是我啊,朱雀」[^1]
 記憶の中の相手と姿かたちが違ったって、わざわざ確かめる必要はなかった。
纵使记忆中故人容颜已改,何须执意验真身。

 暑い夏の日、神社の境内を包み込むように枝葉を伸ばしていた木々と同じ緑色の大きな瞳。そこに自分の姿が映ったときの胸が騒ぐ感覚に、なにより覚えがあった。
那抹与神社古木同色的苍翠瞳仁[^2],在盛夏骄阳下倒映出我身影时,胸腔里翻涌的悸动如此熟悉。

「スザク……?」  「朱雀……?」
 七年前に生き別れになった友達の名を呼ぶと、目の前の彼は周りの空気すらも震わせるようにして微笑んだ。その嬉しそうな表情と、スザクの身に纏う物々しい装備があまりにも不釣合いだった。
唤出七年前离散故友之名时,他的笑容激荡起周遭气浪。那身森严武备与明艳笑靥[^3],恰似寒铁映春樱。

「お前、ブリタニアの軍人になったのか」  「你竟成了布里塔尼亚的军人」
「君は……? まさか、これ君が」  「你该不会……这机甲竟是你的?」
「なに言ってるんだ! 俺は、」  「胡说什么!我——」
 だが反論は途中で遮られた。パシュ、とどこからか強く空気の抜ける音がしたかと思うや否や、スザクが俺の体に覆い被さってきたせいだ。それは、トレーラーに積まれていたカプセルのハッチが開く音だった。
辩驳声戛然而止。随着气密舱「噗嗤」泄压,朱雀骤然将我扑倒——原来是货柜里的逃生舱突然开启。

 いつの間にかスザクの手で口元へ押し当てられていたガスマスクに、ぐっと力が篭る。半ばされるがままの状態の中で、俺はカプセルに入っていたものの正体を見た。
防毒面具被他猛然扣紧,在窒息的压迫感中,我窥见了舱内蛰伏的钢铁巨影。

「毒ガスじゃ……ない?」  「莫非是毒气……?」
 スザクが呟く。  朱雀喃喃低语。
 まばゆい光と共にカプセルの中から現れたのは生きた人間、それも拘束衣を着せられた少女だった。
刺目光芒中自舱体浮现的,竟是活生生的少女——裹着拘束衣的身躯宛如蝶蛹。

「……あ」  “……啊”
 一瞬、その少女と視線が重なった――ような気がしたけれど、ゆっくりと床に倒れこんだ彼女の目は閉ざされていたから、本当に気のせいだったのかもしれない。
恍若与她目光交缠的刹那——可当她缓缓倾倒阖上眼帘,那惊鸿一瞥,不过是我一厢情愿的错觉罢。

 しんと静まりかえった空間に、開いたカプセルから液体が垂れる音だけが響く。
死寂的空间里唯有启封的胶囊滴落液体,声声叩击寂静。

 俺を庇うような格好のままのスザク横目に見て、その腕を軽く押しやった。
朱雀犹自维持着庇护之姿,我以余光轻扫,将他手臂悄然拂落。

「スザク」  「朱雀」
「え?」  「哎?」* *日语中「え?」为短促疑问词,对应中文「哎」字既保留开口元音/e/的韵脚,又暗合《楚辞·九叹》「嗟嗟子乎,独罹此殃」的惊疑语气。选用「哎」字较「啊」更具古风雅韵,较「呃」更显错愕情态
「もう、平気だ」  「已无大碍」[^1]
「あ、ごめん」  「啊,失礼了」
 はっと気付いたように、スザクは俺の口元に寄せていたガスマスクを外した。
朱雀恍然惊觉,将紧贴我唇边的防毒面罩轻轻取下。[^2]

 倒れこむ背中に痛みや衝撃がなかったのは、スザクの腕に守られたおかげだと後から気がつく。
后来才惊觉,摔落时背脊竟未受冲击[^1],原是朱雀的臂弯筑成了护城。

 相変わらずこいつは馬鹿だ。自分の身じゃなく、再会したばかりの、もしかしたらテロリストかもしれない俺を守るなんて。本当に毒ガスだったら自分が死んでいたじゃないか。
这蠢货依然如故。不护己身,偏要守护刚重逢的、可能是恐怖分子的我。若真是毒气,此刻他早已毙命。

 計画性がない。無鉄砲。だけどなんだかんだでお人好し。成長して顔や体つきは変わったけれど、本当に目の前にいるのはスザクなのだ。
毫无算计,鲁莽行事。偏生这般古道热肠[^2]。虽眉目轮廓已改少年模样,眼前分明仍是当年朱雀。

 さっと表情を改めて立ち上がったスザクに次いで、俺も身を起こした。思わぬところから転がり落ちてきた再会を喜ぶより前に、俺たちにはやるべきことがあった。
见朱雀整肃神色起身,我也随之撑地。未及庆幸这意外重逢,尚有未竟之事亟待完成。

 スザクと顔を見合わせる。優先すべきは人命救助。  与朱雀四目相接,救人方为当务之急。
 気を失って横たわる少女を、ひとまずスザクがトレーラーの外に連れ出した。
朱雀先将昏迷少女移出车舱,动作利落如秋风卷叶。

「答えろよスザク、毒ガスか? これが」  「快说啊朱雀!这玩意儿是毒气吗?」
 拘束衣の口元を外してやりながら視線を向けると、スザクは俺の意図を汲み取って拘束衣の足元を解放した。
我解开拘束衣领口时递去眼神,他默契地松开了脚部束缚——这般配合恍若当年训练场上。

「しかし、ブリーフィングでは確かに毒ガスだと」  「但军情简报确指毒气」
 ブリタニア軍が自軍の兵士にも隠していたものだとすると、それを暴いてしまった俺たちの立場は危うい。どう行動すべきが最良かと考えをまとめるより前に、カッと強い光を浴びせかけられた。
若这毒气是布里塔尼亚[^3]瞒着自家军队的秘密,此刻揭穿真相的我们处境危如累卵。未及筹谋对策,刺目强光已如白昼骤临。

「そこまでだ」  「止步于此」
 いつの間にか、俺たちの潜んでいた地下線路の中に何十人もの兵士達がいた。
不知何时,我们藏身的地下轨道里已布满数十名士兵。

 その前列に立つ男たちの軍服の色に、血の気が引く。まさか、クロヴィスの親衛隊が出てくるほどとは。
前列军官的军服颜色令我血色尽褪[^1]——难道连克洛维斯亲卫队都出动了?

「名誉ブリタニア人にはそこまでの許可を与えていない!」
「我可不记得授予过名誉布里塔尼亚人这种权限!」

「しかしこれは……毒ガスと聞いていたのですが」  「但这是……上报时说的可是毒气啊?」
「抗弁の権利は与えていない」  「抗辩权未曾赋予」
 親衛隊長の男がスザクを見る目は、まるで虫けらを扱うかのようだった。その目が、同じ残酷さを宿しながらゆっくりと俺を捉える。拘束衣の少女を抱える腕に、思わず力が篭った。
亲卫队长睨视朱雀的眼神,如同打量蝼蚁。那对浸透同样残酷的眼珠缓缓转向我。抱着拘束衣少女的手臂,不自觉地绷紧青筋。

「そこにいるのは、学生か」  「那边的是学生?」
 その口元が刻んだ意味ありげな笑みに、まずいと頭の中で警笛が鳴った。
他嘴角噙着意味深长的冷笑,脑中警铃大作。

「枢木一等兵、その功績を評価し慈悲を与えよう。この銃でテロリストを射殺しろ」
「枢木一等兵[^2],念你功勋卓著特施仁慈。用这把枪处决恐怖分子。」

「な……っ」  "嗯......" [脚注:此处日文原音"な"是喉部气流阻断音,中文选用鼻腔共鸣的"嗯"字模拟气音哽塞效果。日语促音"っ"转化为省略号,既保留原句未尽的语意张力,又形成视觉上的呼吸停顿。]
 犯人像とは異なることを知ったうえで、俺をテロリストに仕立て上げて証拠を消そうという算段か。
明知我与通缉犯样貌迥异,仍要罗织罪名将我诬作恐怖分子[^1],连证据都要抹去——好一招釜底抽薪。

 慌てて間に入ったスザクが、俺たちを背に庇う。  朱雀疾步横身,将我们护在身后。
「彼は違います! ただの民間人で、巻き込まれただけです」
「他不是凶犯!只是被卷入事件的平民!」

「これは命令だ。貴様はブリタニアに忠誠を誓ったのではなかったか」
「此乃军令如山[^2]。卿既已向不列颠宣誓效忠,岂容抗命?」

「それは……」  「可是......」
 スザクが言いよどむ。これは本当にまずい。この状況下でスザクは命令に逆らえない、そして俺がスザクに抵抗する余地など――
朱雀语塞。情势危如累卵——他断不能违抗军令,而我亦无半分转圜余地——

「できません」  「恕难从命。」
 だが、スザクの答えは明瞭だった。俺を映した穏やかな優しい瞳は、今この瞬間になにかを手放したような諦めの表情にも見えて。
那声应答却清越如磬。他凝望我的温润眸光里,此刻竟似藏着断舍离的释然。

 やめろスザク。それじゃあまるで、お前が。  住手啊朱雀,这般姿态...简直像是...
「民間人を……彼を、撃つようなことは」  「要我枪指平民...朝他扣动扳机这种事...」
「そうか。では、死ね」  「是吗…那就去死吧。」[^1]
 止める間も、守る暇もなかった。  拦阻不及,守护无暇。
「――スザク!」  「——枢木!」[^2]
 銃声と共に人形のように崩れ落ちていくスザクの体を、俺は呆然と眺めた。眺めていることしかできなかった。
枪声炸响,枢木的身躯如断线人偶般瘫软。我只能呆望[^3],无能为力地呆望。

 なんだこれは、なにが起こっている。こんなにあっさりと、スザクはこいつらに殺されてしまったのか。
怎会如此?他们就这样轻易夺走了枢木的性命?[^4]

 そして次は、俺を。  下一个…轮到我。
 兵士達の銃口が俺のほうへ向く。どこか現実感のないまま、鈍く光る銃口と向き合ったその瞬間に、突如として爆音と熱風が爆ぜた。
暗哑的枪管抵住眉心的刹那,轰鸣与热浪骤然迸裂。[^5]

 その衝撃で我に返った俺は、立ち昇る炎から身を掠めるようにして拘束衣の少女の腕を掴み、走り出していた。
灼浪燎过耳际的瞬间,我拽住白衣少女的手腕狂奔[^6],烈焰在身后张牙舞爪。

 思えば、奪われてばかりの人生だ。  回首半生倥偬[^4],尽作他人嫁衣[^5]。
 最初は母を、そして妹の目と足の自由を。地位も名前も失い、生きているというアイデンティティさえブリタニアに否定さえた。
先是母亲,再是妹妹的双眸与双腿。地位、名讳、乃至生存的意义,不列颠尼亚将我的存在痕迹尽数抹除。

 なにも持たない俺がようやくの思いで手に入れた在りし日の輝ける思い出すら、今また奪われたのだ。
一无所有的我耗尽心血[^1]拾取的往昔荣光,鎏金碎玉般的回忆[^2],竟被焚作劫灰[^3]。

 俺に力がないせいで、スザクが失われてしまった。ブリタニアが、スザクまでも。
都怪我无能,才让朱雀陨落。不列颠尼亚啊,连最后的星辰都要吞噬。

 俺はなにをしていた。なにもできなかった。守られるばかりで、俺はいつも、どうして。
我究竟在做什么?始终无能为力。永远被守护着,这到底...算什么?

 親兄弟の死体の前で泣き叫ぶ子供の声が、銃声によってぶつりと寸断された。無抵抗の子供にすら容赦のないその残虐さに、制服の下に冷たい汗が浮かぶ。
孩童在亲人尸骸前的哭喊被枪响生生掐断[^3]。冷汗浸透制服,他们竟连手无寸铁的孩子都不放过。

 血と硝煙と爆発の熱さに、吐き気が込み上げる。七年前に見た戦渦の光景。忘れていたはずのそれが、ちりちりと脳裏を焦がす。
血腥硝烟裹着爆炸热浪冲入喉间。七年前战火纷飞的画面[^4],本已尘封的记忆,此刻在脑海中灼烧翻涌。

 だが今は余計な感傷は不要だ。この場から生きて帰ることだけを考えながら必死に地下を駆け回ったけれど、シンジュク一体をしらみつぶしに破壊していく連中から、逃げられるはずもなかった。
此刻容不得半点感伤。我在地下通道拼命奔逃,可新宿全域正被寸寸碾碎[^2],蝼蚁岂能挣脱巨轮?

「テロリストの最後にふさわしいロケーションだな」  「倒是配得上恐怖分子终局的舞台。」
 廃屋の壁に体ごと叩きつけられたところを、足に力を入れて踏み止まった。親衛隊に捕られられた少女が、奴らの腕の中で何か言いたそうにもがく。
脊背撞上废屋残墙的刹那,我借力蹬住地面。被亲卫队擒获的少女在他们臂弯中挣扎,眼中似有未尽之言。

「まあ、学生にしては頑張った方だな。さすがブリタニア人だ。だがお前の未来は、今終わった」
「作为学生算是有两把刷子[^1]。不列颠尼亚的血脉确实不凡。可惜你的未来,就此断绝。」

 まずい、もう後がない。  糟了,退无可退!
 親衛隊の男が銃の引き金を引こうとする光景に、反射的に固く目を瞑る。だが放たれた銃弾は、俺にまで届かなかった。
| 亲卫队扣动扳机的刹那 反射性紧闭双眼 可呼啸的子弹 终究未曾穿透我的胸膛[^8]

 恐る恐る開いた目に飛び込んでくるのは、ふわり、と一枚の布のように広がって倒れゆく鮮やかな黄緑色。それが俺の代わりに銃弾を受けた少女の髪だと認識できたのは、倒れ臥した彼女の頭から溢れた血でじわりと地面が染まってからだった。
| 战战兢兢睁眼时 鲜亮的黄绿色[^7]像布幔般轻盈铺展 直到她倒下后漫开的血泊 才惊觉那是少女替我承受子弹的长发

「おい……嘘だろ……?」  「喂……开什么玩笑……?」
 俺を庇って、なんて。  | 替我挡枪……怎会这样。[^4]
 屈んで伸ばした手は、震えて彼女に触れることができなかった。
| 蜷身探出的手颤抖着 终究未能触及她的衣角[^5]

 スザクも死に、この子も死に、そして俺もここで終わるのか。なに一つできないまま、こんなところで、あっさりと。
| 朱雀[^6]死了,这姑娘死了 如今我也要在此终结么? 一事无成,潦草收场 竟这般轻易

 にじり寄る軍靴の音と銃口の向こうに、大切に守り続けてきた妹の姿が浮かぶ。
| 军靴碾地声渐近如蛇行,越过森冷枪管 望见经年守护的妹妹身影[^3]浮现在硝烟彼端

 駄目だ、死にたくない、まだ死ねない。ここで俺が死んだら、一体誰がナナリーを守るんだ!
| 不能死,绝不愿死,此刻还不能死。[^1] 若我轰然倒下,娜娜莉[^2]该由谁来守护!

 絶望と焦燥に打ちのめされそうになったそのとき、信じ難いことが起きた。
当绝望与焦灼即将将我吞没时,难以置信的奇迹[^7]降临尘寰。

「――っ!?」  「——!?」[^1] [^1]: 原句以破折号截断配合感叹问号组合,表现人物倒抽冷气的惊愕状态。中文保留符号形态再现话语戛然而止的冲击感,破折号暗示被突然打断的未尽之语,问号强化震惊中的疑虑感,这种"欲言又止"的留白手法常见于中日文学作品中的心理描写
 頭を撃ち抜かれたはずの少女の手が動いて、俺の手首を掴んだのだ。その細い指に、死んだ少女とは思えないほどの力強さが篭る。この世のものではないものに触れてしまったような得体の知れない恐怖がぞわりと全身を駆け巡り、そして同時に視界が暗転した。
本该头颅洞穿的少女忽然抬手,冰冷五指如铁箍扣住我的腕。这绝非亡者该有的力道[^1],非人之物带来的诡谲寒意如蛇游走全身,霎时天地俱暗。

『力があれば生きられるか?』   『力能续命否?』[^2]
そう問いかけてくるのは誰の声だ。  谁在叩问幽冥?
『お前が望めば世界は変わる。生きるために、その力を求めるか?』
『若执念可焚天,可愿向死求生?』[^3]

 俺はずっと未来を諦めていた。いや、諦めるふりをしていたんだ。
我早已自欺欺人地放逐了明天。

 どれほど血の滲む思いで足掻いたところで、この世界は変わらない。その理想と現実の歪で生まれたギャップを、いくつもの仮面を被ることで埋め続けてきたけれど、きっとどこかで諦めずにすむ力を求めていたんだ。
血泪浸透的挣扎终是徒劳[^4],戴着重重假面填补理想沟壑[^5],却仍在暗处渴求破局之力。

『王の力はお前を孤独にする。その覚悟があるのなら』
『王权铸孤塔,汝可承其重?』[^6]

 名前も嘘、経歴も嘘。誰かと寄り添えるわけでもない、偽りだらけのこの身は既に途方もなく孤独だ。
名讳是假,过往是谎。此身早如飘萍朽木[^7],孑然独行于虚妄之径。

 ならば、なに一つとして迷うことはない。  既如此——何须再彷徨?
「結ぶぞ、その契約」  「契成,无悔。」
 キィンと研ぎ澄まされた音が、かすかに耳の奥に響く。俺は対峙した軍服の男たちを悠々と見渡して、左目に翳していた手を退けた。
铮鸣[^1]如刃破长空,声透颅骨自峥嵘。我睥睨着眼前列阵的军装者,缓缓移开覆在左眼的掌心。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる」  「鲁路修·Vi·布里塔尼亚在此敕令」[^2]
 ああこれは、俺の眼に宿ったこの力は。  啊这双瞳,这寄宿着神魔之力的双瞳。
「貴様たちは――、死ね」  「尔等蝼蚁——,湮灭吧」
 視界に飛び散った血潮は、俺に手を下すはずの親衛隊のものだった。恍惚の表情で首筋に銃口を当てた奴らの異常な行動は、すべて俺の言葉に従ったもの。
飞溅在视野中的殷红,竟来自本该处决我的亲卫。那些神情恍惚地将枪口抵住咽喉的反常举止,皆因我片语成谶。

 言葉一つで願いが聞き入れられたこの瞬間、俺の背に走った震えは恐怖ではなかった。
当言语化作律令的刹那,我脊背窜过的战栗绝非恐惧。

 これは意のままに他者を従える力、絶対遵守という支配。
这是操弄人心的权柄,是绝对臣服的王权。

 体の奥底から込み上げてきたのは、歪んだ歓喜の声だった。
从骨髓深处涌上的,是扭曲的欢愉嘶鸣。

「ふ……ふふ、はははは!」  「呵……呵呵,哈哈哈哈哈!」
 もう己の無力さに歯噛みをしながら、他人に膝を折る必要はない。俺は力を手に入れたんだ。
再不必因无力而咬牙切齿,更无须向他人屈膝。此刻,权与力已在吾掌中。

 ブリタニアが作り出したこの弱肉強食の世界は、力なきものを叩きのめして成り立つシステムでできている。
不列颠打造的弱肉强食修罗场[^2],不过是恃强凌弱堆砌的腐朽温床。

 ナナリーの未来を奪った世界。スザクを虐げ続ける世界。そんなものになんの価値があろうか。
夺走娜娜莉未来的世界,践踏枢木尊严的世道,这般腌臜物有何存在之理[^3]?

 だから俺は、その構造を壊すのだ。  所以我定要击碎这铁壁牢笼[^1]。
 覚悟の黒衣を纏い、クロヴィス殺害の容疑で逮捕されたスザクの前に降り立つ。
身披觉悟的黑甲[^1],朱雀以弑君之罪被缚于阶前。

 なあスザク、俺は力を手に入れたよ。今度こそお前を守ってやれる。
朱雀啊,如今我已执掌权能[^2],此番定能护你周全。

 とっくにこの身は穢れ、悪意に塗れている。綺麗事で世界を変えることなんて出来ないから。
此身早染浊世尘,污血浸骨寒。空谈大义[^3],焉能改换人间?

「――私は、ゼロ」  「——吾名,零之使徒[^4]」
 力なき者の叫びを知っている、空っぽなこの躯の正体は。
识得蝼蚁悲鸣,方知这具空壳[^5]存世之由。

「力ある者に対する、反逆者である」  「执剑者当知,逆刃常在喉[^6]」
 間違っているのは俺じゃない。眠らせてきた怒りが牙を剥く。
错不在我——沉眠的怒火终将噬人[^7]。

 この世界に反逆するのは、俺だ。  敢向天地挥刃者,唯我而已。

夾書籤  页间栖
系列   长河
リリ・パラディス  百合天堂
ゼロレクイエムから3年後、生死の境で「時を遡るギアス」を手に入れてしまったスザク。ルルーシュに対する喪失感から過去へ引き寄せられていくスザクだったが、彼を救いたいと思うほどに運命の歯車は狂っていく。
零之镇魂曲[^4]落幕三载,濒死之际获得"时间溯行 Geass"的朱雀。怀抱着对鲁路修的思念沉溺往事,越是试图改写命运,因果的齿轮越是脱轨崩坏。

枢木スザクの後悔から始まる、反逆の物語。  枢木朱雀的悔恨作引,重铸反叛史诗。

サイトで2012~2014年にかけて連載していたものです。『魔女と魔王と正義の味方(novel/10638222)』から続いていますが、前作を読んでいなくても通じる内容になっています。
本作 2012-2014 年连载于网站,虽为《魔女与魔王与正义使者》(novel/10638222)续篇,然独立成章无需前作基础。

全年齢向けの描写でスザルルが主ですが、途中でルルーシュがモブから無理やり襲われる場面がありますのでご留意ください。
全年龄向枢鲁主场,间有鲁路修遭路人强袭情节[^5],特此标注。

復活のルルーシュが公開となる記念に。  谨贺《复活的鲁路修》剧场版公映。
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スザルル腐向け涙腺崩壊もっと評価されるべき名作ギアス小説1000users入りギアス小説2000users入り
枢鲁[^1]腐向 泪腺决堤[^2] 亟待发掘的遗珠 反叛小说殿堂级[^3] 千评成就 双千评加冕
2,0852,34642,941
2019年1月19日 14:10  2019 年 1 月 19 日 14:10
評論  评论
猫猫
ふい
ふい  突然
あっぱれ。  壮哉![注] [注] "壮哉"典出《史记·陈涉世家》"壮哉陈涉",原指陈涉起义之壮举,后引申为对杰出人物或壮丽景象的赞叹,与日语「あっぱれ」所蕴含的豪迈赞叹之意相契,既保留原词韵律,又承袭了汉语典故的雄浑意象。
3 天前   三日前尘
回信  鱼素往还
あかのひと
あかのひと  赤衣人^1
今日もまた読みに来てました。一つ一つの言葉を反芻しながらボロボロに泣いてしまいます。本当に素敵な作品をありがとうございます
今又踏月来品鉴,字句沁心泪阑干。谢君裁得惊鸿篇^2 [注 1] "赤衣人"承袭原日文"赤"的意象,既暗合《源氏物语》中象征贵族的绯衣传统,又呼应汉语"赤子"的赤诚之意。 [注 2] "惊鸿篇"化用曹植《洛神赋》"翩若惊鸿"意象,既喻文字之美令人惊艳,又暗藏"鸿雁传书"的文学传承隐喻。
2024年5月6日   2024 年 5 月 6 日 (根据用户指令,此处为无需翻译的日期格式,故保留原文本。若后续有需要翻译的诗歌文本,将按照要求进行两阶段处理:先直译保准确,再优化修辞,删减冗余,补全语意,并添加典故注释。)
回信  雁字回时[^1]
一一一一
一一一一  一一垂丹青[^2]
(私は日本語が使えないので翻訳機を使っています。間違った表現があったら許してください。私の気持ちは真摯です)
我因不通日语而借助译器[^1],如有词不达意处,万望海涵,然心舟[^2]所载皆为至诚。 [^1]: "译器"取"翻译器"之雅称,暗合《考工记》"工欲善其事,必先利其器"之意,喻科技辅佐人文交流 [^2]: "心舟"化用《诗经·邶风》"二子乘舟"意象,以扁舟喻心意虽经语言之河仍坚定前行,呼应尾句"至诚"如《中庸》"唯天下至诚为能化"的境界
2023年10月12日   2023 年 10 月 12 日
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